コロナ その時、

2020年に3度の波 新型コロナウイルス、日本社会を一変 (2/2ページ)

 武漢から世界へ 死者170万人超

 連載第1回の見出し「武漢医師の『警鐘』届かず」が、今振り返るとことさらに重く響く。中国湖北省武漢市で27人が原因不明のウイルス性肺炎にかかったと公表されたのは、2019年の大みそか。翌2020年1月20日に中国当局が「人・人感染」を認めたのを受け、同23日から武漢市が都市封鎖されたがすでにウイルスは世界に広がっていた。

 中国当局の初動対応に問題があったことは事実で、後に最悪の感染に見舞われる米国のトランプ大統領は新型コロナを「中国ウイルス」と呼んで中国の責任を追及。米国は世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長を「中国寄り」だとしてWHO脱退を決め、米中対立が国際協調体制にほころびを生じさせた。

 2月にはイタリア、イラン、韓国での感染が顕著となる。イタリアでは同月23日、北部の11自治体が封鎖され、ロックダウン(都市封鎖)のはしりとなった。

 テドロス氏がパンデミック(世界的大流行)を宣言したのは3月11日。この頃から米国では東部ニューヨーク市を中心に感染者が急激に増え始め、4月には医療崩壊の危機に至る。

 秋口から欧州に第2波

 危機を脱した中国は他国の窮状をみて、マスクなど医療用物資の供給で影響力を強める「マスク外交」を展開。米政権は中国の知的財産窃取や不公平な貿易慣行を問題視して「中国デカップリング(切り離し)」を進めていたが、他国も中国に過度に依存するサプライチェーン(供給網)のもろさを認識した。

 累計の感染者が世界最悪の約1900万人に上った米国では、感染予防か経済活動かの選択が11月の米大統領選に影響し、経済重視のトランプ氏の敗北が確実になった。

 ブラジルやインドなど新興国にも感染は広がり、欧州では秋口から感染の第2波に襲われ、英国は新型コロナウイルスの変異種の感染拡大で外出制限措置が発動された。

 この1年で世界で約8000万人が新型コロナに感染し、170万人以上が命を奪われた。世界は新型コロナという人類の新たな脅威とともに年を越すことになった。

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 治療薬開発、世界が急ぐ

 新型コロナウイルスは1月に発見されると直ちにゲノム(全遺伝情報)が解読され、異例の速さで研究が進んだ。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスと同様の仕組みで人に感染することが分かったが、病気のメカニズムはまだ十分に解明されていない。

 ウイルスの外側にはスパイク状の突起があり、これが人の細胞の表面にある受容体と呼ばれる特定のタンパク質に結合すると、感染が起きる。いわば鍵と鍵穴の関係だ。ウイルスは細胞内に侵入すると自分自身のコピーを量産し、増殖する。この過程を妨げることで、治療薬の開発を目指す動きが世界規模で進んだ。

 米企業が開発した世界初の治療薬「レムデシビル」が5月、米国で緊急に使用許可されたが、効果は限定的で、世界保健機関(WHO)は使用を推奨しないと11月に表明した。現時点で特効薬はなく、治験で効果が確認できなかった候補薬も少なくない。厚生労働省の専門部会は12月、国産の治療薬として期待される「アビガン」について、有効性の判断は困難だとして承認を見送った。

 治療での大きな課題は、重症化する患者の見極めが難しいことだ。遺伝的背景を調べることで、どんな人が重症化しやすいのか探ったり、重症化の予測の指標となる物質を探して早期治療につなげたりする研究が急ピッチで進んでいる。

 重症化はウイルスを攻撃する免疫細胞の働きが過剰になり、自分自身の体も攻撃してしまう「免疫の暴走」が一因と考えられている。ただ、この現象を抑える効果がある治療薬を使った治験では、明確な効果は得られていない。

 欧米でワクチン実用化

 一方、収束への切り札と期待されるワクチンは欧米で実用化段階を迎えた。当初の予想を上回る驚異的なペースで開発が進行し、米ファイザーが12月、欧米初の使用承認を英国で取得。米国でも承認され、接種が始まった。

 日本企業は治験で大きく出遅れた。政府はファイザーなど3社から計2億9000万回分の供給量を確保し、まず医療従事者から今年度内にも接種開始を目指す。その後、高齢者や持病のある人にも対象を広げていくが、国民全体にいつ普及するのかは見通せない。

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