ヘルスケア

ワクチン拒否に米医療の「暗部」影響? 根深い人体実験の歴史 (1/2ページ)

 【アメリカを読む】新型コロナウイルスのワクチンの接種が英国や米国などで始まり、感染拡大に歯止めを掛けるものとして期待が高まる。多くの人が接種を希望する一方で、米国では一定数の人々が接種に後ろ向きな姿勢を取っている。世論調査などから浮かび上がってくるのは、異例ともいえるスピードで開発、承認手続きが進められた経緯に対する危惧に加え、医療の発展に隠された暗部が影響しているとの指摘もある。(ワシントン 住井亨介)

 スピード開発に懸念

 米製薬大手ファイザーなどが開発したワクチンの接種が始まる前に、AP通信などが実施した調査(昨年12月3~7日)によると、接種したくないとした人は26%、分からないとした人は27%あった。

 接種しない・分からないとした人のうち71%が副作用を危惧。ワクチンの開発が異例のスピードで進められたことを懸念する人も57%あった。

 ファイザー製ワクチンや、米バイオ企業モデルナが開発したワクチンはいずれも有効性が約95%と非常に高い。それにもかかわらず、米国民の不信感は根強く、接種を希望する人でも、他の人が接種するのを待つとした人は57%で、すぐに接種したいとした42%を上回った。

 黒人の拒否反応強く

 人種間の反応の差も顕著に表れている。

 医療政策に関する調査・提言をおこなっているカイザー家族財団(KFF)の世論調査(11月30日~12月8日)によると、接種を拒否する人で副作用を懸念する割合は、白人が56%なのに対し、黒人は71%に上った。

 黒人が拒否する理由には、(1)誤解に基づくものと、(2)根本的な不信感があるとみられる。

 同調査では、50%がワクチン接種によってコロナウイルスに感染すると答え、47%がワクチンを全面的に信頼していないとした。先のAP通信の調査でも、接種すると回答したのは白人53%に対し、黒人で24%にとどまる結果が出ている。

 ただ、米NBCテレビ(電子版)によると、黒人のコロナウイルスによる入院率は白人の3・7倍。死亡率は2・8倍になるという。黒人は医療保険の加入率が低く、持病を持つ人が多いためと考えられるが、にもかかわらず、なぜ黒人の人々はワクチンに抵抗感を抱くのだろうか。

 人体実験の歴史

 黒人があまり接種に積極的ではない理由の背景には、過去に黒人が医療発展の犠牲となった暗い歴史があるとみる向きがある。

 NBCによると、その一つがいわゆる「タスキーギ梅毒実験」と呼ばれるものだ。政府の承認のもと、アラバマ州タスキーギで1930年代から70年代まで約40年間にわたって黒人を対象に行われた。

 この実験は、無料で医療を提供するとして集めた梅毒患者らの病状がどのように悪化するかを観察するのが目的だった。失明や精神錯乱、合併症といった症状があらわれても実質的な治療は行われず、100人以上の被験者が死亡。配偶者らへの感染拡大も放置され、多くの母子感染も引き起こしたという。

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