受験指導の現場から

合格者数の水増しに大手が“メス” 「信用ならん」塾を選んでいいのか (1/2ページ)

吉田克己
吉田克己

 国公立大学の志願者数が低調らしい。産経新聞の記事「国公立大2次志願倍率0.6倍 中間集計、異例の低さ…コロナ影響か」によると、文部科学省の関係者は、低倍率の原因について、「新型コロナウイルスの影響で直前まで試験方法を変更する大学が相次ぐなか、感染状況などをぎりぎりまで見定めて判断する受験生が多いのではないか」と推測しているとあるが、実態は少し違うのではないかと考えている。

 コロナ禍のなか、受験生あたりの受験回数は確実に下がっている(に違いない)。結果として、満足のいく校数にチャレンジできず、「進学したい私立」をまだ確保できていない生徒は例年より多いと考えられる。「感染状況などを見定めて…」というよりは、私立受験のなかで満足のいく結果を得られていれば国公立は「チャレンジ!」、そうでなければ国公立は「安全策」―のいずれを落としどころにするのか、ぎりぎりまで十二分に見極めたいというところだろう。

 一方で、中学受験に目を向けると、例年高倍率が続いている都立中高一貫校の最終応募倍率は、昨年度よりも多少下がったとは言え、相変わらずの高倍率である。東京都教育委員会によると、「一般枠募集における都立中高一貫校10校の平均出願倍率は、前年度より0.61ポイント減の5.13倍」である。

 単純計算では、男女押し並べての合格率は、昨年の16.8%が19.5%になったということになる。ちなみに、筆者が主戦場としている塾では、都立中高一貫校の合格率は30.1%、筆者が昨年度担当した志望校別クラスの合格率は50.0%(合格者数2桁)であった。

合格実績の“水増し”を内部告発

 合格実績という点では、去る12月の上・中旬、業界関係者に「とうとう老舗が痺れを切らせたか」と思わせるニュースが地味に流れた。神奈川県を地盤とするR塾が、「当社が行っている強引な生徒勧誘や合格者作りの手法には社会的に容認できない」などと内部告発を受けたのだ。

 R塾は塾生から、成績優秀な友人の名前・塾名・志望校などを聞き出し、塾生を通じてその友人に模試やアンケートを配布。模試や講習などの申し込みにつながると、塾生が金券類をもらえたという。同塾はまた、入試直前に、他塾に通う生徒の籍を変えずに「特待生」として勧誘し、自塾の合格実績を増やしていたという。特待生とは、難関校の受験・結果報告・広告掲載などを条件に、授業料が一定額免除される制度らしい。

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