大変革期のモビリティ業界を読む

HV、PHVは「身近な発電機」 給電機能持つクルマで地震や台風への備えを (2/2ページ)

楠田悦子
楠田悦子

 豊田市のSAKURAプロジェクト

 災害時に役立つ外部給電機能が付いたクルマを普及させる取り組みを行っている自治体がある。愛知県豊田市だ。給電機能を持つクルマ1台をひとつの桜の花びらに見立てて、桜の花びらを全国に咲かせて満開にし、災害に強い国を目指す活動「SAKURAプロジェクト」を展開している。

 市民に「防災」の視点でクルマを選んでもらったり、災害時に避難所となる体育館に外部給電機能がついたクルマから電気を供給できるコネクタを装備したり、万が一の時に備えている。

 豊田市企画政策部未来都市推進課の中神泰次課長は「HVやPHVの外部電源の機能についてまだまだ知られていない。トヨタが国内で販売するハイブリッド車などの電動車は年間約64万台で、もしこの64万台すべてに外部給電機能がつけられると約100万kW(64万台かける1500W)が確保でき、原子力や火力などの発電所1基分に相当する。つまり毎年発電所1基分の非常用電源が全国に分散配置されることを意味する。外部給電機能が付いたクルマを1人でも多く保有し、使える状況にすれば、災害に強い日本ができる」と訴える。

 2019年の台風15号による千葉を中心とした地域での停電被害を受けて、経済産業省と国土交通省「災害時における電動車(HV、PHV、EV、FCV)の活用推進マニュアル」(2020年7月)をまとめている。給電時の注意事項などの記載があるので参考にするとよい。

 これからガソリン車が減りHVやPHV、そしてEV、FCVがますます普及するため、各家庭で非常用電源が確保できるようになる。しかし問題はこの機能についてまだまだ知られていないことだ。クルマの機能について改めてカーオーナーが把握するとともに、豊田市のように自治体や国でも積極的な活用を検討していく必要があると感じる。

心豊かな暮らしと社会のための移動手段・サービスの高度化・多様化と環境を考える活動に取り組む。自動車新聞社のモビリティビジネス専門誌「LIGARE」創刊編集長を経て、2013年に独立。国土交通省のMaaS関連データ検討会、自転車の活用推進に向けた有識者会議、SIP第2期自動運転ピアレビュー委員会などの委員を歴任。編著に「移動貧困社会からの脱却:免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット」。

【大変革期のモビリティ業界を読む】はモビリティジャーナリストの楠田悦子さんがグローバルな視点で取材し、心豊かな暮らしと社会の実現を軸に価値観の変遷や生活者の潜在ニーズを発掘するコラムです。ビジネス戦略やサービス・技術、制度・政策などに役立つ情報を発信します。更新は原則第4月曜日。アーカイブはこちら

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