受験シーズンも山場を越え、確定申告の準備を始める今頃が、筆者にとっての1年が終わる時期である。この1年間、長年の中・高・大学受験に加えて、大学・短大・専門学校での就職試験や公務員試験の対策講座も担当しながら、考え続けてきたことがある。学力が伸びる子と伸びない子とでは、根本的に何が違うのだろうかと。
たとえば―算数+αに限って言えばだが―理数系科目の受験勉強をやったことがない全入に近い大学・短大・専門学校の1年生(以下、T群)と、半年から1年後に中学受験を迎える偏差値50程度の小学生(以下、C群)とでは、C群のほうが「適性検査(非言語)」や「数的処理」に関する能力は高い。数学まで範囲を広げても、T群の一部には中2の途中から学力がまったく伸びていない感すらある。
学力が伸び続ける子と頭打ちになってしまう子とでは、学力云々以前の「何か」が違っているのだろうか? と思案せずにはいられない。捉え方を逆にすれば、早い段階で、その「何か」を“頭打ち型”から“伸び続け型”に変えることができれば、人生のなかで何度か、あるいは何度も経験することになる、筆記試験などに対する適応力が備わってくるはずだ。
低学力学生と“頭打ち型”塾生との共通点
実際、「学力が中2の途中からまったく伸びていない感がある学生」と、「中学受験塾の平均レベルのクラスにいる生徒のなかで学力が頭打ち状態に陥っている生徒」とのあいだには、授業中やテスト中の行動に多くの共通点がある。
【筆者が考える「共通点」】
- 行動の切り替えが素早くできない、けじめがつかない…
- ・授業開始時刻になっても注意されるまで飲み食いしている
- ・授業開始時刻になってからトイレにいく
- ・「起立、礼」が終わるとすぐにしゃべり始める
- ・出席確認のあいだ静かにしていられない
- ・問題を解き始めるまでに時間が掛かる
- 集中力が続かない…
- ・ついつい聞き流してしまう、ほかのことを考えてしまう
- ・1問解き終わったら休んでしまう
- ・試験時間を目一杯使えない
- ・諦めが早い
- 注意を受けても少しのあいだしかもたない…
- ・5分も経たないうちにまたしゃべり始める
- ・聞くべき時に傾聴できない
- 時間の使い方をコントロールできない…
注意をされても行動を改めることができず何度も同じことを注意されるようではどうしようもないが、「切り替えが遅い」「集中が続かない」については、中学受験塾の中位クラスであれば2割程度の生徒には当てはまる。一方、T群のほうはというと―そのクラスの雰囲気にもよるが―これらの共通点に該当しない学生のほうが少ない。
長期的な学力向上のためには、「素早い切り替え」「持続的な集中力」「適切な時間の使い方」が、何事にも先立つ特質でなければならないのではないか?
「学力強者=仕事がデキる奴」とは限らないが…
ここまでのところで、こう思われた方は少なくないだろう。「それって、仕事がデキる、デキない、と同じじゃない?」と。そう、この推断に頷けるということであれば、受験の意義を捉え直すこともまた意味のあることではないだろうか。
「仕事がデキる、デキない」には、さまざまな能力が関わってくるため、一概に「学力強者=仕事がデキる奴」とは限らない。たとえば、仕事をする上で最も大切な資質はコミュニケーション能力だとされているが、受験勉強がコミュニケーション能力の向上に大きく資するとは思えない。しかしながら、処理能力や問題解決力など、仕事がデキるかデキないかを決める能力のなかには、集中力や切り替え力、時間管理力の有無に大きく左右されるものは多い。