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意外と知られてない? 世界初の高速鉄道に影響与えた小田急ロマンスカー (3/4ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 「運転士気分」味わえる前面展望席

 ロマンスカーの由来がロマンスシートだったとしても、ロマンスカーと聞いて多くの人が思い浮かべるのは展望席。これも1963年にデビューしたSE車の後継、3100形(NSE)から続くロマンスカーの伝統だ。今も昔も「運転士気分」を味わえる前面展望席は子供たちのあこがれの的である。

 ロマンスカーミュージアムの1階には、小田急で初めて展望席を設置したNSEのほか、リクライニングシートを採用した7000形(LSE)、高床式のハイデッカー構造となった10000形(HiSE)も展示される。展望席のデザインが時代とともにどう変化しているか眺めるのも面白そうだ。

 一方、歴代ロマンスカーには、展望席が付いていない形式も存在する。例えば、今も現役で活躍する30000形(EXE、EXEα)。唯一ブルーリボン賞を受賞しなかったロマンスカーと聞けば残念な印象を持つ人もいるかもしれないが、そんなことはない。座席と座席の間隔のシートピッチも拡大され、何より座り心地も良い。

 6両編成と4両編成で分割・併合できる10両編成になったのもEXEの特徴だ。途中の相模大野(相模原市)で、6両編成が箱根湯本方面へ、4両編成が片瀬江ノ島方面へと分かれて運用することもできる。この発想はその後、60000形(MSE)にも受け継がれている。

 NSEやLSEはEXEより1両多い11両編成だが、連接構造の車両は1両当たりの長さが通常の車両(1両約20メートル)よりも短く、NSEやLSEの編成長は通常の車両で換算すると7両分に相当する。これがEXEでは10両となったのだから、単純計算で約3両分も定員が増えたことになる。

 都心への通勤や買い物などで普段からロマンスカーを利用する沿線住民にとってはありがたい存在で、定員が増えたおかげで、ロマンスカーで座って帰りたいのに、「満席で乗れない」ということも減った。EXEは現在、EXEαへのリニューアルが進められており、快適性がより向上している。

 JR東海の御殿場線へ相互直通する特急車両として1991年に登場した20000形(RSE)も展望席は設置されていないが、2階建てのダブルデッカー車両を連結していたのが特徴だ。特別席「スーパーシート」(グリーン車に相当)やセミコンパートメントも備え、当時は西伊豆の玄関口である沼津(静岡県)まで乗り入れていた。このRSEもロマンスカーミュージアムに展示される。

 ちなみに、前述のMSEも展望席はない。EXEと同様、分割・併合が可能な10両編成で「フェルメールブルー」と呼ばれるメタリック調の独特な青色の塗装が施されている。MSEはマルチ・スーパー・エクスプレスの略。地下鉄線内やJR御殿場線に乗り入れることができる。

 東京メトロ千代田線の大手町駅や霞ケ関駅で現れると、つい目を奪われる。フェルメールブルーの車体は都心の地下空間でそれだけ異彩を放っている。この車両、一時期は臨時特急「ベイリゾート」として東京メトロ有楽町線の新木場まで乗り入れたことも。千代田線から有楽町線へは、普段は営業列車が通らない連絡線を経由するとあって注目された。現在は、小田急線の新松田駅付近からJR御殿場線の松田駅付近を結ぶ連絡線を通過する特急「ふじさん」でも使われ、まさに“マルチ”に活躍している。

 このように、ロマンスカーは時代の変遷とともに独自の進化を遂げ、さまざまなバリエーションが展開されている。

 伝統のバーミリオンオレンジ

 変わらない伝統もある。小田急のフラッグシップとして2005年に登場した50000形(VSE)では連接構造と展望席が復活。2018年にデビューした最新型の70000形(GSE)では、連接構造こそ採用されなかったものの展望席の伝統は維持された。大型の1枚ガラスを使用した前面窓からはダイナミックな眺望を楽しめる。

 MSEは青、VSEは白を基調とした塗装だが、いずれも「バーミリオンオレンジ」と呼ばれる色の帯をまとっている。外観の印象は変わっても、ロマンスカーのイメージカラーは不変だ。

 ロマンスカーといえば、「ミュージックホーン」と呼ばれる補助警笛も伝統の一つだろう。「小田急、小田急、ピポピポー 特急着いた、箱根に着いた…」という歌詞を思い出した人もいるかもしれない。三木鶏郎作詞・作曲のこの歌は、その名も「小田急ピポーの電車」。テレビCM向けの楽曲では、ミュージックホーンの音を「ピポピポー」と表現していた。

 このミュージックホーン、今でもロマンスカーが駅を発車する際などに耳にすることができる。車両形式によって音色は異なるものの、独特のメロディーは変わっていない。

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