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「落ちこぼれ」は親が許さない 企業も投資、中国の私立国際学校

 日本では入試も終わり、卒業・入学を迎えるシーズンとなったが、中国では「高考(大学入試)」のカウントダウンが始まり、続く数カ月は「受験」がホットワードとなる。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 中国版お受験の過酷さは有名だが、それをリアルに知ったのは、日本に長く住み、日本でお受験を体験した中国の友人が語った言葉だ。

 「日本のお受験は二極化していますよね。真剣にやる派とノンポリ派です。でも中国は違う。全てが真剣派で、選択肢はないのです」

 競争は激烈で、成績に対するプレッシャーが半端ないのだそうだ。

 「一人っ子だから親はお金がふんだんに使える。例えば英語の成績がよくなかったとすると、夏休みに、親子で米国や英国に行って、2カ月英語を勉強させる。あっという間に習得してしまうわけです。こういうことが当たり前のように行われています」

 日本では「ゆとり教育」で、落ちこぼれたとしても本人の好きなように生きさせるというのが主流となったが、中国ではまだまだ「落ちこぼれ」は親が許さない。

 そうしたなか、近年数を増やしているのが私立学校の存在である。なかでも「国際学校」と呼ばれるのは、いわゆるインターナショナルスクールではない。国際バカロレア、AP(アドバンスト・プレースメント)課程など海外の教育システムを導入した私立の中学・高校である。なかには、民間企業が資金を出して設立されたものもあり、アリババグループの「雲谷学校」、不動産大手・万科集団の「万科梅沙書院」など、それぞれ特徴的な教育を展開している。中国では私立学校の歴史は長く、既に宋の時代から良家では「私塾」を開き、著名な先生を招いて教育を施していたという。

 こういう私立学校で教える先生たちの経歴がすごい。中国の友人からの情報によると、某私立学校に新規採用された先生たちは、全員が修士か博士の学位を持ち、出身校もケンブリッジ、オックスフォード、ロンドン、ペンシルベニア、コロンビア大などの国際的に有名な大学や、中国国内でいえば、北京大学や清華大学出身者など、そうそうたる人材が教師として採用されている。

 これを可能にしているのが待遇の良さだ。学校の所在地、先生の経歴によって差があるが、基本給だけでも公立学校よりも数倍は高く、加えて住宅をはじめ、各種手当が付加される。海外で学歴を積んだ帰国留学生たちにとっても、悪い条件ではないようだ。

 経済発展に伴い、過熱する教育熱のなかで育つ中国の子供たちは、いずれ国際社会の競争のなかで渡り合っていく。彼ら「新中国人」たちは、今後どういう影響力を及ぼしていくのか、引き続き注目していきたい。

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