ピュアスポーツM3は新たなフェーズへ
条件付きながらハンズフリーも備わった。ウインカーレバーでの車線変更も許す。あくまでドライバーが操ってこそM3である、という主張は改められ、時代の流れに即した高度運転支援技術が盛り込まれたのである。
もっとも、宗旨替えではまったくない。ひとたびアクセルペダルを床まで踏み込めば、視界が滲(にじ)むほどの激辛な加速を見舞うし、ステアリングを切り込めば体の血液が偏るほどの横Gが襲う。走りのパフォーマンスには一点の曇りもないばかりか、旧型を置き去りにするほどの速さを備えたのだ。速さに磨きをかけていながら、その性能を守り、余すことがないように調教されているのである。パワーユニットが電動化に向かい、ドライビングが自動運転に近づくこの時代に、それとの折り合いをつけるかのように速さと安楽さをバランスさせているように思えた。
BMWが誇るピュアスポーツM3は、新たなフェーズに突き進もうとしている。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。