宇宙開発のボラティリティ

網で捕ってモリで刺す? 最先端スペースデブリ除去プロジェクトの独創性 (2/3ページ)

鈴木喜生
鈴木喜生

網で捕る、銛で刺す

 イギリスのサリー大学が開発した「リムーブ・デブリ」(Remove Debri)は、網や銛(もり)などによってデブリを除去するというシステムです。一辺が70センチほどのこの小型実証機は、2018年4月、無人補給機に搭載されてISSに向けて打ち上げられ、同年6月、日本の実験棟「きぼう」のエアロックから放出されました。

 その後、デブリに見立てたキューブサット(立方体の小型衛星)をみずから宇宙空間に放出すると、そのターゲット目掛けて網、または銛を発射して捕獲します。ターゲットを捕獲するとワイヤーによってそれを牽引し、本体に搭載された減速器を起動して高度を落とし、デブリとともにみずからも大気圏に再突入して燃えつきます。実証実験では網と銛、どちらの方法でもデブリ捕獲に成功しています。

【網によるデブリ除去の実動画】

燃料が枯渇した人工衛星にドッキングして延命

 赤道上の高度3万6000kmに人工衛星を配置すると、機体が地球をまわる周期と地球の自転速度が同期するため、その機体は地上から見ると空の一点に留まって見えます。こうした効果が得られる軌道を「静止軌道」と呼び、そこに配置された衛星を「静止衛星」と言いますが、この静止軌道上には、気象観測衛星など数多くの機体がひしめき合っています。

 静止衛星は軌道を修正するための燃料を搭載していますが、燃料が枯渇してくるとさらに200~300kmほど高い「墓場軌道」に移動され、そのまま投棄されるのが一般的です。3万6000kmという高軌道から高度100km以下の大気圏まで高度を落とすには大量の燃料が必要であり、コストが掛かるからです。

 こうしたデブリ化した静止衛星に対処するため、ノースロップ・グラマン社が2019年10月に打ち上げた人工衛星が「MEV-1」です。MEVとは“Mission Extension Vehicle”の略であり、「ミッション延長衛星」を意味します。

 燃料が枯渇したインテルサット901に接近したMEV-1は、2020年2月、そのデブリ化した静止衛星とドッキングすることに成功しました。そして以後5年間はその動力装置としての役割を果たします。

このようにMEV-1は退役した衛星を復活させ、その延命をはかります。燃料さえ残存していれば2機目、3機目の人工衛星にドッキングし、そのミッションを延命させることも可能です。

 ノースロップ・グラマン社は発展型の「MRV」も現在開発中で、こちらは搭載したロボットアームで軌道上の人工衛星をメンテナンスすることが可能となっています。

日本の民間企業は磁力でデブリとドッキング

 2021年3月22日(日本時間)、日本の民間企業によるデブリ除去衛星が、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。アストロスケール社の「ELSA-d」は、世界初の民間企業によるデブリ除去衛星であり、今回打ち上げられた機体はその技術実証機(テスト機)です。

 このELSA-dは、サービサーと呼ばれる親機(約175kg)から、クライアントと呼ばれる子機(約17kg)を軌道上でリリースし、磁気を利用して再ドッキングするテストなどが行います。不規則に回転する子機に合わせて姿勢を変えながら再ドッキングしたり、故意に子機をロストさせてそれを追跡・捕捉するその技術は、過去に例がないほど高度なもので、とくに低軌道におけるデブリ除去が期待されています。

【デブリ除去衛星「ELSA-d」】

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus