受験指導の現場から

自分の名前であっても「習っていない漢字は使うな」 小学校での指導に唖然 (2/2ページ)

吉田克己
吉田克己

 その効果はというと―例えば、授業で「“なぎ”は風が止まると書いて“凪”と書くよ」「“積らん雲”くらい、早めに“積乱雲”と書けるようにしようね」といった説明をすれば、確認テストの時には何割かの生徒は漢字で書いてくる。「水溶液」「飽和」「結晶」「寒剤」「昇華」「湿度」「上弦」「金環日食」「子房」「気孔」「弾性」「乾電池」「並列」などでも同様である。

 相手が中学生であれば、「じん臓」「すい臓」「花こう岩」「せん緑岩」「せきつい動物」「ほ乳類」くらいのレベルであれば、板書は「腎臓」「膵臓」「花崗岩」「閃緑岩」「脊椎動物」「哺乳類」だし、「濾紙」「胆嚢」「斑糲岩」「橄欖石」「孵化」のレベルであれば、「書けなくても読めたほうがいいね」と言って(相手が小学生であっても)漢字表記を引き合いに出すことは珍しくない。

文脈のなかで覚えるほうが定着は早い

 漢字で書けたからと言って、理科の点数が上がるわけではないのであるが、読めないより読めたほうがいいに決まっている。そして、受験は自分が担当している科目だけでの勝負ではない。

 畢竟、新出用語については、小学生であれば漢字表記、中学生以上であればプラス英単語を同時に伝えることは多い。漢字にせよ英単語にせよ、語彙は羅列されている形式で覚えるよりも、文脈のなかで覚えるほうが、あるいは視覚化されたものとセットのほうが、圧倒的に定着が速いからだ。

 例えば、地図記号を覚えるためのテキスト(小学3年生用)は、ひらがなと漢字が併記されていたり、書き込み式の教材であれば選択肢がふりがな付きの漢字になっていたりする。雷、霧、霙、霰、雹といった難しめの漢字も、天気記号とセットなら多少は覚えやすいかもしれない。英単語であれば、「炭素の元素記号はなぜCかと言えば、炭素は英語でcarbonだから」「凸レンズの焦点をなんでFと略記するかと言えば、焦点は英語でfocusだから」「麦芽糖にはたらく消化酵素がマルターゼ(maltase)なのは、麦芽糖は英語でマルトース(maltose)だから」といった具合である。

 もし筆者が、小学4~6年生に教材を用意するならば、交ぜ書きだらけのものは選ばない。ふりがなを多用しながらも上位学年で習う漢字を積極的に採用しているものを選ぶ。一部の子どもであっても、子ども自身の「その言葉の漢字を知りたい(書けるようになりたい)」「それを漢字で書けるってかっこいい」という気持ちを等閑にしてはいけない。

京都大学工学部卒。株式会社リクルートを経て2002年3月に独立。産業能率大学通信講座「『週刊ダイヤモンド』でビジネストレンドを読む」(小論文)講師、近畿大学工学部非常勤講師。日頃は小~高校生の受験指導(理数系科目)に携わっている。「ダイヤモンド・オンライン」でも記事の企画編集・執筆に携わるほか、各種活字メディアの編集・制作ディレクターを務める。編・著書に『三国志で学ぶランチェスターの法則』『シェールガス革命とは何か』『元素変換現代版<錬金術>のフロンティア』ほか。

受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。更新は原則第1水曜日。アーカイブはこちら

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