▼「信託法商品」と「任意組合型」に特有の税金の留意点
「信託法商品」も「任意組合型」も、分配金は不動産所得の課税対象ですので、不動産取得等にかかる各種税金等や、取得(出資)額に対する各年の減価償却費を経費に算入することができます。しかし、現物不動産における不動産所得のように、収入から経費を引いた所得が赤字の場合に給与所得等の他の所得と相殺できるしくみ(損益通算)が適用できないとされています。
不動産所得の利点のひとつが損益通算なので、これを使えないのは残念なところです。
また、売却(償還)時は不動産の譲渡所得の扱いとなりますので、所有期間が5年以下だと短期譲渡とみなされて税率が非常に高くなってしまいます。中途解約する場合には注意が必要です。
▼事業者が倒産した場合は?
いずれのスキームにおいても、投資商品である以上、元本割れリスクを伴いますが、昨今の不動産小口化商品のほとんどには事業者が倒産した場合でも、各オーナーの持ち分を分別管理し保証する措置が取られています。
投資を検討する際には、この措置の有無もチェックしておくことをお勧めします。
不動産小口化商品の魅力とうまみ
筆者の雑感ですが、昨今増えている不動産小口化商品の一番の魅力は、投資物件、あるいは不動産を活用した事業プロジェクトの個別性に応じて、自分で選別して少額資金で出資できる点にあると考えます。
現物不動産のようにファイナンスを活用したダイナミックなレバレッジ効果は期待できませんが、裏を返せば借金なしで大規模プロジェクトに関わることもできます。また、ゆかりのある地域の創生に寄与する目的で、小口化商品を通じて地方の不動産や事業プロジェクトに投資するという考え方もあります。REITのように市場に連動する金融商品としての値動きや税制メリットはないものの、特異な物件のオーナーとして名を連ねる妙味はあるでしょう。
何かひとつの方法に特化するのでなく、不動産に投資する選択肢がまた広がっていると考えれば、その興味は尽きません。
【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら