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「2時間5500円の焚火が大人気」都会暮らしの人たちが“火起こし”に集まるワケ (2/2ページ)

 ■便利な社会になぜあえて火を使うのか

 スノーピークが創業したのは1958年。本社がある新潟県三条市で最初は金物問屋として産声を上げた。当地は江戸時代から続く鍛冶技術でも知られる土地柄で金属加工業が盛んだ。クライマーでもあった創業者は、登山用具の製造・販売を手がけ始め、金属加工技術を生かした商品が支持されて業容が拡大した。焚火台もその技術のひとつだ。

 同社の従業員はアウトドア好きが多く、アウトドアパーソンやキャンパーとして「人間性の回復」も共有する。今回、こんな話も耳にした。

 「キャンプ参加者にはファミリー層が多く、中には『自宅ではオール電化で生活しているので、子どもは火を使う生活をしていない。だからあえてキャンプに参加しました』と話す家族連れもおられます」(永松氏)

 現代生活が便利になった半面、昔の人が持っていた「ヒトとしての本能」が失われたともいわれる。ナイフを使えない、マッチを擦れないといった話も耳にする。

 また、SNSや動画の見過ぎで疲れてしまわないよう、休みの日はあえてスマートフォンを手放したり、電源を切ったりしてスマホを触らないという人もいる。アウトドア体験は、そうした「デジタルデトックス」を楽しむ機会にもなりそうだ。

 ■たった7%のユーザーを増やすには

 スノーピークが「焚火ラウンジ」で目指す道を整理すると、次の3点だろう。

 (1)まずは「体験」することで興味・関心を高めてほしい

 (2)興味をもった人には、商品の購入やイベントの参加をしてほしい

 (3)本人だけでなく、家族や友人・知人も取り込み愛好家を増やしたい

 すでに紹介した事例もあるが、それぞれ簡単に説明しよう。

 (1)は、まさに今回の「焚火」や「BBQ」がそれに当たる。前述の3種類のプランの中には「デイキャンププラン」(来店~19時まで)も用意されているが、多くの人には焚火やバーベキューのほうがとっつきやすいだろう。

 (2)は、作物栽培をイメージするといいかもしれない。「焚火体験」は、小さなコンテナで作物を育てる体験に近い。そうした栽培に興味を持った人の中には、(A)自宅近くで区画農園を借りる→(B)県境を越えて広い農園を借りる→(C)定年後や人生のステージ変更で移住して本格的な農作物栽培--と進む人もいる。

 もちろん(A)から(C)に進むほど従事人口は減っていくので、本格的なキャンパーが一気に増えるわけではない。

 (3)は、影響力を持つ人に訴求する手もある。キャンプ好きの中には、子ども時代に親に連れられて各地のキャンプに行き、ハマった人もいる。キャンプ好きの友人・知人に誘われて興味が深まったという人もいる。いずれにせよ「楽しい体験」が前提だ。

 ■根強い「抵抗感」をどう解消するか

 矢野経済研究所によると、国内のアウトドア関連市場は約5000億円といわれる。コロナ禍の外出自粛で、近年の伸びは一段落したが、人気は底堅い。

 キャンプに興味を持つライト層も増えてきたが、課題も残る。例えば「衛生的ではない」という声だ。以前多かった不満が「入浴できない」ことだが、シャワー設備や温浴施設があるキャンプ場も増えて改善されてきた。炊事場もかなり進化してきた。

 夏は「虫対策」も欠かせない。晴れていても天気の急変に備えた雨具の準備や防寒具も必要だ。いずれも熟練者には当たり前だが、興味を持ったばかりの人には分からない。

 どこに抵抗感をもつかは個人差があり、どの層にどう訴求するかはマーケティング次第だろう。

 楽しい体験は思い出として残り、いつかどこかでやってみたくなる。便利すぎる日常生活を離れて「不便を楽しむ」人が増えれば、焚火愛好家も増えていくだろう。

 「スノーピークのキャンプイベント終了後には、スタッフが会場を見回って清掃をしますが、ゴミもそれほど落ちていません。経験者ほど自分たちで出したゴミは持ち帰るのも徹底されていると感じます」(永松氏)

 多くの場所では地面に直接火をつける直火は禁止だ。焚火台の使い方や利用ノウハウと一緒にマナーも学んでいきたい。

 

 高井 尚之(たかい・なおゆき)

 経済ジャーナリスト/経営コンサルタント

 1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

 (経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之)(PRESIDENT Online)

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