大変革期のモビリティ業界を読む

生まれ変わりつつある自動車教習所 免許返納の高齢者に“電動ミニカー”販売も (1/2ページ)

楠田悦子
楠田悦子

 クルマの運転免許を取得するために通った自動車教習所。クルマがないと生活できない地方都市の教習所では、運転寿命を延ばしたり運転免許証の返納後の移動手段を提供したりするなど、新たな役割に期待が高まっている。

 高齢社会のニーズを満たす教習所

 高齢者の免許返納は日本の社会問題として大きく取り上げられるようになった。しかし今、免許返納に直面している高齢者層の多くは、80歳以上。免許取得率も低い世代で、この問題はまだ序章に過ぎない。今後、毎年100万人レベルで交通弱者が生まれるとの予測もある。

 この交通弱者を救う方法として、公共交通の充実がある。しかし、残念ながら公共交通がカバーできないエリアも多くそれだけでは不十分だ。地方都市の実情を見れば、クルマを運転できる期間(運転寿命)をできるだけ延ばすか、もしくはクルマに代わるパーソナルモビリティを提供することも必要になる。

 運転寿命を延ばす方法として、自分の運転は安全であるかどうか確認してもらい、問題があれば改善するというものがある。来年から、違反のあった高齢ドライバーは、運転免許更新時に実車試験が導入されるが、対象となる高齢者以外の運転に不安のある人も、常に運転の評価を受けたり見直したりする必要がある。

 すでに運転免許取得者教育(高齢者ドライバーの身体機能の状況や、自動車等の運転に必要な適性検査などを行なう講習)などの仕組みがあるため、このような仕組みをうまく使って、評価や改善が一般的に行われるようになるとよいだろう。

 またクルマの運転が心配になる前に、高齢者に対してクルマに代わる公共交通やパーソナルモビリティの紹介を誰かがすべきだ。だが、それを誰も担えておらず、危険なクルマの運転を続けている場合が多い。クルマに乗れなくなるほどに認知、判断、操作機能が落ちると、“一人”で公共交通や自転車に乗って出かけられないのが実情だ。

 運転寿命の延伸やクルマに代わる移動手段の紹介などの高齢化社会のニーズを、クルマの運転の技能レベルを確認したり、技能を教えたりするプロ集団である全国の教習所が満たすことができるのではないだろうか。

 資格のある指導員、コースを擁し、学科を勉強する教室などを備え、道路交通法令の定める基準に適合し、公安委員会が指定した指定自動車教習所は全国に約1340施設ある。中でも福岡県大野城市の南福岡自動車学校はおもしろい動きをみせている。

 母体はこの南福岡自動車学校なのだが、ホールディングスの代表取締役社長を務める江上喜朗氏が経営を担うようになると、自動車学校の経営で培ったノウハウを他の事業に展開し、AIと自動運転の技術に着目した「AI教習所」、教育・モビリティ・地方創生事業などの事業を対象としたスタートアップの支援事業(ミナミインキュベート)、他の教習所へのコンサルティング事業(教習所サポート)など、一般の指定教習所では見られない新規の事業展開を行い始めたのだ。

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