就活4月解禁めぐり産業界に“温度差” 三木谷代表「前近代的な感じ」

2013.4.10 11:46

 大学生の就職活動の解禁時期を4年生の4月以降とする政府方針を受けて、「要請があれば粛々と受け止めていく」との考えを示した経団連。だが、実際の動きはいぜん慎重だ。

 日本商工会議所は、経団連が定めた採用活動に関する自主ルール「倫理憲章」の改定で意見交換を求めたが、経団連側は消極的な姿勢を見せており、産業界内に微妙な“温度差”が生じている。

 就活の短縮、高島屋など産業界は歓迎

「政府として歓迎したい」

 菅義偉官房長官は9日の閣議後の記者会見で、経団連の米倉弘昌会長が就活期間の短縮を認める考えを示したことを評価した。あわせて、実際に就職活動の時期を遅らせる際に「学生に混乱が生じないよう、また中小企業の採用活動にも十分配慮することが重要だ」と指摘した。

 政府は「若者・女性活躍推進フォーラム」がまとめる提言を踏まえて、5月にも経済界に正式要請する見通しだ。早ければ平成27年3月に卒業予定(現在の3年生)から適用される可能性がある。

 ただ、これまで「数カ月の間に結婚相手を決めるのと同じで、学生には死活問題になる」と、就活短縮に否定的だった米倉会長が容認に転じた背景には、政府との協調維持を優先する思惑がある。「経済再生に向けて官民で歩を進めなくてはいけない時期に余計な波風をたてたくない」(経団連幹部)という判断だ。

 このため、容認はしたものの改善に向けた経団連の動きは鈍い。日商は「経済界で意見を集約すべきだ」と、解禁時期などについて意見交換する機会を経団連に求めていたが、「特に聞いていない」(経団連幹部)と静観しているのが実態だ。

 産業界では、就活期間の短縮について「われわれが2年前から提言していた」(経済同友会の長谷川閑史代表幹事)など、前向きな声は少なくない。

 大手百貨店・高島屋の鈴木弘治社長は「学生生活の多くを就職活動に費やすのは好ましくない」と手放しで歓迎する。大手商社の業界団体、日本貿易会も同様に、学業への影響が緩和されるとする。

 IT関連企業などで構成する新経済連盟の三木谷浩史代表理事からは「前近代的な感じがする」と、統一ルールで採用活動を規定することに対し、冷ややかな声も上がる。

 経団連が、実効性のある改革案を自ら打ち出せなければ、財界の影響力の低下にもつながりそうだ。

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