【ネットろんだん】ネットで見る将棋の魅力って? 電王戦“観戦”230万人が興奮共有

2013.4.28 14:21

 将棋の現役プロ棋士がコンピューターソフトに敗北した「第2回将棋電王戦」。全5局は動画サイト「ニコニコ生放送」(ドワンゴ運営)で生中継され、延べ230万人が視聴し、寄せられたコメントは280万件に及んだ。今や将棋観戦は同サイトの3大コンテンツの一つに数えられるという。ネットで見る将棋のどこに魅力があるのだろうか。

 「ソフトが新手を生み出したのか」「A級プロが圧倒されるところまで来ているとは」…。今月20日、三浦弘行八段(39)を破った「GPS将棋」の指し手に対し、驚きのコメントが次々と投稿された。

 はてなブックマークなどからコメントを拾うと、塚田泰明九段(48)が「プエラα」戦で粘って引き分けに持ち込んだ第4局には「勝ちにこだわったところがさすがプロ」という声の一方で、アルゴリズム(計算方法)の裏をかくプロの戦法に「ソフトの穴を探しても…」と不満の声も。第3局で「ツツカナ」が見せた好手には、「人間には浮かばない」と感心するコメントが多い。

 そして目立つのが「将棋はあまりやらないけど面白かった」「棋士のすごみを感じた」といった感想だ。

 ついコメントを…

 「ここまで大きくなるとは思わなかった。将棋はニコニコ生放送で最も見られる3大コンテンツの一つになっている」

 電王戦を日本将棋連盟と共催したドワンゴの川上量生(のぶお)会長(44)は、現役最強棋士の一人、羽生善治三冠(42)と3月14日に行った対談でこう説明した。残り2つはアニメと政治だという。

 昨年、ニコニコ生放送で将棋番組を見たのは延べ826万人。同社内には川上さんをはじめ将棋好きが多く、平成22年に将棋ソフト「あから2010」と清水市代女流王将(当時)の対局を生中継したのが始まりだ。

 好評を受け翌年には公式棋戦を、昨年からはタイトル戦を扱うようになり、22年に6万5000人だった視聴者は100倍以上に急拡大している。

 「将棋は適度に間が生まれることで、ついコメントしたくなるゲームだ。みんなでわいわいと騒げるニコニコに向いている」(川上さん)

 名人戦も生中継され、約20万人の視聴者が盤面を見守る。将棋連盟も解説に人気棋士を出演させるなど、全面協力している。連盟電子メディア部の草留翔平さん(26)は「反応は予想以上に好意的。格式高いイメージがある将棋に、親しみを持ってくれたらうれしい」と話す。

 「縁台将棋」再来?

 羽生三冠は、先の対談で「昔の縁台将棋の楽しみを、今風にアレンジしたようだ」と例えている。

 今回の電王戦を取材したライター、坂本寛さん(37)は、鉄道ファンの「撮り鉄」「乗り鉄」と同じように、将棋好きの中に対局が好きな「指す将」と観戦を好む「観(み)る将」があるとし、「ネットで棋譜中継や対局中継が行われるようになったことで、『観る将』の楽しみが広がっている」と話す。

 奥が深い将棋だけに、形勢を即座に判断するのはプロでも難しいことがある。自宅のテレビ前では静かに観戦せざるを得なかった人も、ネットなら「今のはいい手?」「どちらが優勢なの」などとつぶやくこともできる。庶民の楽しみだった縁台将棋に、今はネットを介して一流棋士が顔を出す。そう考えるだけで楽しくなる世界が広がっている。(城)

【用語解説】将棋電王戦

 日本将棋連盟の棋士と世界コンピュータ将棋選手権の上位ソフトとが対局する、同連盟とドワンゴが主催するイベント。昨年1月の初回は連盟の米長邦雄会長(当時、昨年12月死去)が自ら戦い、「ボンクラーズ」に敗れた。第2回はソフト5本と棋士5人の団体戦で行われ、棋士側の1勝3敗1分けで現役の男性プロ棋士が初めて敗北。ドワンゴ側は第3回の開催を呼びかけている。

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