【社説検証】北海道電再値上げ 産読日「原発の再稼働を急げ」 「ゼロ」前提に知恵絞れと朝毎

2014.8.13 12:40

 北海道電力が電気料金の値上げを経済産業省に申請し、同省の委員会で審査が始まった。昨年9月に続く値上げで、今回の申請は家庭向けが約17%、認可不要の企業向けは約23%と、かなり大幅である。

 5紙はそろって、泊原子力発電所(北海道泊村)の再稼働が実現せず、火力発電の燃料費が膨らんでいることが再値上げの要因であることを指摘するとともに、北電に対しては一層の企業努力と工夫を求めている。しかし根幹の主張には、大きな対立点が鮮明に浮き上がる。

 産経と読売は、設備投資が滞れば安定的な電力供給に支障が生じる恐れもあることから、ともに、一定の料金値上げはやむを得ないと論じた。

 そのうえで産経は「遊休資産の売却や人件費の削減などの合理化に取り組む必要がある」、読売は「一段のリストラの余地はないか、検討してもらいたい」と、企業努力で値上げを小幅にとどめるよう要望した。同様に経営の効率化を求めた日経は、他の電力会社についても「再値上げの回避へ最大限の努力が求められる」と言及する。

 これら3紙に共通するのは、そうした経営努力には限界があり、値上げを回避するには何より原発の再稼働が必要であることを訴えた点である。

 冒頭で「(再値上げは)『原発稼働ゼロ』という異常事態の代償」だと断じた産経は「原発なしのままでは他の電力会社も料金引き上げは避けられない」「産業界も値上げで悲鳴を上げており、日本の国際競争力の低下にもつながりかねない。これでは、安倍晋三政権が目指す日本再生も果たせない」と懸念する。そして政府には、安全性を確認した原発の早期再稼働に真剣に取り組むよう促した。

 読売は「泊原発の再稼働が実現し、収支が改善すれば、値下げの環境が整う」「再値上げを防ぐには、原発を再稼働し、発電コストを下げるほかに手立てはあるまい」と述べ、日経も「泊原発がすべて稼働すれば燃料費を月間180億円節約できる」として、やはり再稼働の重要性を強調した。

 対して朝日は、福島の事故を経て原発は「安全や後始末にお金がかかる電源」に変質したとの見地から「原発頼みでは、結局、値上げを繰り返すことにならないか」「原発が動かないことを前提に、安くて良質な電気を供給するにはどうすれば良いのか、経営の発想を切り替えてほしい」と、「原発ゼロ」の下での経営戦略を北電に求めた。

 毎日は、他の電力会社も原発依存の点では北電と同じ構図だと示し、「だから原発を動かせというのは短絡的だろう」「原発停止が料金値上げに直結したのでは日本経済は立ち行かない。安倍内閣もエネルギー基本計画で、原発依存度を引き下げる方針を示している。その前提を確認した上で、料金抑制のために官民で知恵を絞らなければならない」と論を展開した。朝日同様に、前提はあくまで「原発停止」にあるようだ。

 「原発ゼロ」はいつまで続くのか。読売と日経は、九州電力川内原発の再稼働に道筋が見えてきた現状を紹介し、他原発の安全審査を迅速に進めよと督促した。産経は、年内にも行われる消費税10%への引き上げ判断に触れ、「電気料金の値上げと電力不足を放置したままでは、日本経済は再増税に耐えられない」と危機感をあらわにする。

 経済への不安もさることながら、高い電気料金を気にするあまり冷暖房の使用を躊躇(ちゅうちょ)するなどして体調を崩す人が増えはしないかとの心配もある。北電の値上げ実施は11月以降となる公算が大きいようだが、その先に控える北海道の冬は非常に厳しく、そして長い。(清湖口敏)

 ■北海道電力の再値上げ申請を論じた主な社説

 産経

 ・「原発ゼロ」の重い代償だ (1日付)

 朝日

 ・負担軽減に知恵しぼれ (8日付)

 毎日

 ・許されない問題先送り (2日付)

 読売

 ・原発再稼働で火力頼み脱却を (4日付)

 日経

 ・続く電力危機を映す北海道電の再値上げ (1日付)

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