肺炎球菌ワクチン、高齢者は補助の対象に 助成は年齢限定、しっかり確認を

2014.12.13 17:10

 インフルエンザの流行する季節に、注意したいのが肺炎だ。10月から高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンが定期予防接種に加わった。ただ、対象者が限定されるため、自分が対象となるのか確認が必要だ。(油原聡子)

 体力が低下

 埼玉県川越市の主婦、田中裕子さん(72)は12月上旬、日本医科大学呼吸ケアクリニック(東京都千代田区)で、肺炎球菌ワクチンの予防接種を受けた。田中さんは「高齢だし、肺炎になるのは怖い。周囲にも受ける人が多かったので接種することにしました」と話す。同クリニックの木田厚瑞所長は「ワクチンを接種すると、肺炎になるリスクを下げることができる。発症しても軽症に抑えることができます」と説明する。

 肺炎は、細菌などが肺に入り込んで起こる肺の炎症。原因菌は複数あるが、重症化しやすいのが肺炎球菌だ。健康な人でも主に鼻やのどの奥にいて、唾液などを通じて飛沫(ひまつ)感染し、特に免疫力の低い子供や高齢者に感染しやすい。

 重症化すると、敗血症や多臓器不全、髄膜炎などを引き起こし、命に関わることもある。平成25年の人口動態統計によると、日本人の死亡原因の第3位は肺炎。風邪やインフルエンザをきっかけに肺炎になり、死亡する高齢者も多い。

 肺炎は、風邪の症状と間違えやすいが、(1)呼吸数が1分で30回を超えている(2)呼吸が苦しそうな表情(3)いつもより元気がない-などの症状があったら医療機関を受診した方がよいという。

 木田所長は「体力の低下した高齢者の肺炎は、息切れやせき、たんなどの典型的な症状が出ず、気付きにくいことがある。普段から周囲がよく気をつけてほしい」と話す。

 助成は年齢限定

 こうした状況を受け、厚生労働省は予防接種法の施行令を改正。高齢者を対象にした肺炎球菌ワクチンを定期接種に加えることにした。

 実施するのは自治体で、今年度は65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる人と101歳以上が対象となる。60~64歳でも心臓や腎臓、呼吸器の病気などを抱える場合は対象だ。平成30年度まで、毎年度65歳から5歳刻みで100歳までの人が定期接種として受けられる。その後は毎年度65歳が対象となる予定だ。

 助成額は自治体によって異なるため、確認が必要だ。

 ■ワクチンで重症感染症の7割に対応

 肺炎球菌は約90種類が確認されており、定期接種で使われるワクチン「ニューモバックスNP」は、そのうち23種類を予防。成人の場合、重症の肺炎球菌感染症の7割に対応できるという。

 ワクチンを打つと、2週間~1カ月で抗体ができ、5年以上効果が続くが年々下がっていくとされる。

 平成25年から定期接種の対象になっている子供用の肺炎球菌ワクチン「プレベナー13」が成人用としても承認されているが、定期接種の対象とはなっていない。

 プレベナー13はニューモバックスNPに比べると対応できる肺炎球菌の種類は少ないが、抗体を作る働きは強いとされる。昭和大医学部の二木芳人教授(感染症)は「アメリカでは、プレベナー13を打った後、ニューモバックスNPを打つ2回接種が推奨されている。プレベナー13も定期接種化し、現場で選択できるようになればいい」と指摘している。

 一方、予防ワクチンのない型の肺炎球菌が増える傾向にある。国立感染症研究所感染症疫学センターの大石和徳センター長は「今後の原因菌の変化に注意する必要がある。ワクチンを打ったことに安心せず、風邪やインフルエンザの予防対策にも取り組んでほしい」としている。

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