無味乾燥な情報を“お金”に変える3つの力

2016.1.23 17:10

 GDPを支える「構成要素4つ」を言えるか?

 年末年始の休暇に、情報分析力を高める(=情報を知恵に変える)というテーマの本をあらかた書き上げました。その中で、情報分析力を高めるフレームワーク(基本的枠組み)について考えました。

 結論から先にいうと、次の3つを鍛えることが重要だという結論に達しました。

 (1)「基本的な情報」を得る

 (2)「基礎的な知識」を習得する

 (3)「思考力」を高める

 例を挙げながら、説明をしていきましょう。

 まず、(1)の「基本的な情報」についてです。たとえば、安倍首相がアベノミクスの1つの目標として、「名目GDP600兆円を目指す」と述べています。ここで、現状の名目GDPが約500兆円であるという「基本的な情報」を持っていれば、「600兆円までは20%増」という分析ができます。

 さらに、1990年代初頭の日本の名目GDPも現状と同じ約500兆円だということを知っていれば、「600兆円達成はそう簡単ではない」ということも分かるはずです。

 つまり、ベースとなる情報を持っているかどうかということが、情報をより深く、さらにはその本質を理解するのに不可欠だということです。

 次に必要なのは(2)の「基礎的な知識」です。たとえば、先ほどのGDPの例で言えば、GDPを支える構成要素は、次の通りです。

 ・個人を中心とする「消費」

 ・企業を中心とする「投資」

 ・公的部門による「政府最終支出」

 ・輸出と輸入の差の「純輸出」

 中国人による「爆買い」がGDPを押し上げることは肌感覚で分かりますが、上の4つの「基礎的な知識」(2)を理解し、「貿易収支の赤字(輸出より輸入が多い)が増加」という情報を得た場合には、「その分GDPが減少する」という結論を得られるわけです。

 では、先ほどの「基本的な情報」(1)と「基礎的な知識」(2)との違いは何でしょうか。

 情報は鮮度が必要なことが多く、状況によりアップデートが必要になります。ですから、新聞やテレビ、あるいはネットなどからコンスタントに情報を得て、自身にとっての「基本的な情報」(1)をアップデートしていく必要があるのに対し、「基礎的な知識」(2)のほうは、一旦理解すると、多くの場合、一生使えるということです。

 そのためには、各人が必要な分野については、基本書や専門書を読んで理解しておくことなどが必要です。ただし、「基礎的な知識」(2)も「基本的な情報」(1)がなければ、それを活用することができないことも多く、逆もまた同じです。

 情報と知識と思考力の「ハイブリッド」

 最後は(3)の「思考力」です。これは、ある情報と他の情報を結び付けたり、基礎的な知識を使って分析をしたりすることです。深く考えたり、全く関連のない情報を結びつけたりする能力です。理解やひらめきというものに大いに関連しています。

 これは、普段から物を深く考えるクセをつけたり、難しい本をゆっくりでもいいので分かるまで読んだりすることなどで身につきます。

 ここで、大切なことは、「基本的な情報」(1)、「基礎的な知識」(2)、そして「思考力」(3)もすべて、自身の脳の中で起こるということです。つまり、外部データベースにそれらがあっても、簡単には知恵にはならないということなのです。

 自分の頭の中にそれらをきちんと格納できているかということが大切です(もちろん、複数人で情報や知識を共有したり、知恵を出しあったりすることはできます)。仕事の上では、この自前の格納された情報や知識や思考力をフル活用することでアイデアや儲けを生み出すのです。

 私は、講演やこういう文書を書くときには、原則、直前にはほとんど準備しません。

 それは、自分の頭の中にあるものだけを出しているからです(もちろん、普段からいろいろと勉強をしていることは言うまでもありません)。外部データベースにあるものを右から左にアウトプットしているようでは本物ではなく、自分の頭の中にある情報を自分なりに理解・解釈して、それを自分の言葉でアウトプットすることが大切だと考えているからです。

 皆さんも「基本的な情報」(1)、「基礎的な知識」(2)、「思考力」(3)を意識しながら情報分析力を高め、知恵を出してくださいね。(春までには本が海竜社から出版される予定です。「基本的な情報」の獲得の仕方、「基礎的な知識」の学び方、「思考力」の高め方などについて詳しく書いていますので参考にしてください。)

 経営コンサルタント 小宮一慶(こみや・かずよし)

 1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行入行。86年米ダートマス大学経営大学院でMBA取得。帰国後、経営戦略業務などに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役就任。96年小宮コンサルタンツ設立。企業経営の助言の他、講演や執筆も。最新著は『松下幸之助 パワーワード -強いリーダーをつくる114の金言』(主婦の友社)、『小宮一慶の1分で読む!「日経新聞」最大活用術 2015年版』(日本経済新聞出版社)、『No1コンサルタントが教える 20代の後悔しない働き方』(青春出版社)、『一流に変わる仕事力』(中経出版)など。

 (経営コンサルタント 小宮一慶=文)

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