認知症予防に「コミュニケーションロボ」 人工知能を搭載、ネットで“成長”

2016.2.21 07:20

 言葉をかけると返事をし、愛らしいしぐさもみせる-。そんな人間とコミュニケーションできるロボットが、高齢化の進む中、介護施設などで需要が急拡大している。噛みつかれてけがをしたり、感染症にかかったりする恐れのあるペットの動物とは異なり、扱いやすく衛生的なのが特徴。人工知能を搭載して最新情報を更新、会話などに反映させる機能もあり、利用者の認知症予防効果などが注目を集めている。(栗井裕美子)

 甘え上手の癒し系

 兵庫県尼崎市の特別養護老人ホーム「ゆめパラティース」。利用する高齢者らが取り囲むテーブルに、アザラシ形のロボットが置かれていた。

 「キュー」と鳴いて大きな目をパチパチさせ、首をかしげて甘えると、高齢者らは「かわいい」と歓声。いとおしそうに交代で抱っこをして楽しんだ。

 大和ハウス工業が販売する「メンタルコミットロボットパロ」(保証期間3年の場合、45万3600円)。胴体や鼻先などにセンサーがあり、なでられたり話しかけられたりすると反応する。人工知能を搭載し、コミュニケーションした相手の情報を蓄積。少しずつなついていくという。

 利用者の女性(80)は「昔、イヌを飼っていたことを思い出す」と目を細めた。施設の担当者は「パロが来てから、寝たきりの女性が起き上がり、いい笑顔を見せてくれるようになった」と話す。

 ストレス軽減に効果

 医療関連用品メーカーのピップ&ウィズは、核家族化で増える一人暮らしの高齢者向けに、子供形のロボット「スマイルサプリメントロボット うなずきかぼちゃん」(2万1600円)を販売する。センサーで音を認識すると「お話を聞いているよ」などと答え、抱き上げると「ゆりかごみたい」と喜ぶ。

 同社が大阪市立大大学院と協力し、一人暮らしの高齢女性を対象に検証したところ、一緒に2カ月暮らした場合、認知機能の向上やストレスの軽減、よく眠れるなどの効果が確認された。

 百貨店や家電量販店などで販売しており、全国各地の高齢者施設などに導入。関係者からは「徘徊(はいかい)が少なくなった」「ロボットのために服を手作りする利用者もいる」と好評だ。

 娯楽機能も

 コミュニケーションロボットは、さらに進化を続けている。

 ソフトウェア開発の富士ソフトが開発した「コミュニケーションロボット PALRO(パルロ)」(72万3600円)は人工知能を搭載。歌ったり踊ったりするだけでなく、クイズを出すなど娯楽機能も備えている。

 インターネットと接続することで、ニュースなどの最新情報を次々と更新。利用者と常に新鮮なコミュニケーションができる工夫がされている。

 すでに高齢者施設などに導入され、関係者も「施設側がレクリエーションを準備する手間が省け、介護に専念できる」と歓迎する。

 民間調査会社の矢野経済研究所は、高齢者介護用のロボット市場が、平成23年度の1億2400万円から32年度は349億8千万円まで拡大すると予想。担当者は「国の支援などがあれば、今後ますます需要は増える」とみている。

閉じる