インターバル規制に企業及び腰 業務後に休息時間保障、継続に支障も

2017.1.9 06:18

 電通の過労自殺問題で企業の長時間労働対策への関心が高まる中、翌日の出勤までに休息取得を義務付ける「勤務間インターバル規制」に注目が集まっている。厚生労働省によると、導入企業はわずか2%。普及を後押ししようと助成金制度も創設されたが、経営者側には「業務に支障が出る」との抵抗感が根強い。

 中小助成金で後押し

 インターバル規制は、仕事を終えてから、次に働き始めるまでに一定の休息時間を保障する仕組み。

 過度な長時間労働を防ぎ、従業員の健康を守るのが狙いだ。休息時間が翌日の始業時間を越える場合は勤務の一部が免除されることもある。

 欧州では既に導入されており、政府も昨年、閣議決定した「1億総活躍プラン」に企業の自発的導入を促進すると盛り込んだ。普及を図るため、導入した中小企業に助成金を支払う制度を創設。2017年度予算案に約4億円を計上した。

 通信大手KDDIは15年夏から、管理職を除き、終業から翌日の出社まで最低8時間の休息を義務付けた。さらに11時間の休息が取れなかった日が月に11日を超えた場合、産業医による面談も実施するようにした。

 電機大手シャープや旅行大手JTBグループの「JTB首都圏」も導入。シャープの担当者によると、社員の健康管理への意識も高まっているという。エステ業界最大手のTBCグループもインターバル規制を盛り込んだ労働協約を労組と締結。長南進亮執行役員は「全社員の労務管理に対する意識を底上げできれば」と述べた。

 導入・予定は1割

 しかし、広がりは限定的だ。厚労省の調査によると、回答した約1750社のうち「導入済み」と答えた企業はわずか2%。「導入予定」「導入の是非を検討」と回答した企業も合わせて9%にとどまっている。

 経団連の榊原定征会長はインタビューで「1日単位で残業時間の上限を設けるようなインターバル規制は業務継続性の上から問題。(規制の)義務化は産業界の実態に合わない」と発言、導入を牽制(けんせい)している。

 労働問題に詳しい法政大の上西充子教授は「企業の自主的な取り組みでは広がりに限界がある。まずは法制度化して休息取得を義務付け、最終的には欧州の諸外国並みの11時間休息を取り入れるべきだ」と訴えた。

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