2017.9.3 13:13
インターネットを通じてさまざまなモノやサービスを共有する「シェアリングエコノミー」。そのなかで、服や小物を対象としたファッションレンタルが広がっている。これまでなかった中高年の女性向けワンピースのレンタルが登場したり、洋服をレンタルする際にプロのスタイリストがコーディネートしたりと、サービスも多様化。新品の購入にこだわらない需要を取り込んでいる。(北野裕子)
ワンピースで勝負
滋賀県草津市のファッション通販サイト運営「宙(そら)オリエンタル」が展開するのは、ワンピース専門の月額制レンタルサービス「Brista(ブリスタ)」。30代後半~50代の働く女性をターゲットにした点が特徴だ。事業を始めたきっかけは、梶原裕美社長(46)自らの経験による。
35歳で起業後、ビジネスや社交の現場で服装に気を配る場面が増えた。しかし毎回同じ服装というわけにはいかず、かといって買いそろえるのは費用がかかり、収納場所にも悩む。レンタルの利用を考えたが、当時のサービスは若年層向けが中心。丈が短いなど仕事用には向かない商品が多かった。
周囲のアラフォー女性に聞くと、「既存のレンタルは丈が短い」「ドレスは必要ないが、手頃で上品なものが見つからない」などの声があった。「同じ悩みを抱えている女性は多いのでは…。誰もやっていないなら自分がやろう」。そう考え、昨年4月にサービスを立ち上げた。
働く女性に支持
この年齢層の女性が身につけやすいように丈の長さは基本的に膝(ひざ)より下。ビジネスでの着用を想定し、ワンピースの上からジャケットを羽織っても違和感のない、落ち着いたデザインを取りそろえた。約200ブランドの約1300着を用意する。
当初は月額1万円で1カ月3着までレンタルできるようにしたが、「もっと多く借りたい」との要望も多く、購入ポイントに応じて貸し出し枚数を増やす予定。ワンピースに合わせたショールやジャケットのレンタルも計画している。サービス拡大に向け、7月からサイトを一旦休止してリニューアル中で、近く再開する。
特段の宣伝はしていないが、会員は全国に広がり、地方テレビ局のアナウンサーなどもいるという。梶原社長は「働く女性に手軽にファッションを楽しんでもらい、服を選ぶ楽しさを届けたい」と話す。
スタイリストが選定
服のレンタル業では単に貸すだけでなく、付加価値で勝負するサービスもある。WEBサービス開発「キーザンキーザン」(大阪市)が展開する男性向けファッションレンタルサービス「leeap(リープ)」は、服をレンタルする際にスタイリストがコーディネートしてくれる。
ビジネスの場か私的なパーティーか、出席者の年齢層は? 相手にどう印象づけたいか-などをスタイリストと相談しながら服を決める。普段は着ないような柄の服を選ぶ人もいるという。担当者は「レンタルということで思い切った選択をする人もおり、男性にもファッションを楽しんでもらえている」と話す。
サービス開始から2年で会員10万人を超えた「エアークローゼット」(東京)は女性向けにもコーディネートサービスを行っており、要望に合わせてスタイリストが3着を選ぶ。オフィス用、カジュアル用などと用意するため、服を買う時間がなかなか取れない女性に好評という。
いずれのサービスも、レンタルの気軽さで思い切った色合い、デザインに挑戦できるのが人気。また、購入するのと違い、自宅に服がたまらないなどレンタルの強みが受けているという。
インターネットを介したシェアリングエコノミーは、洋服のほか車や飲食関係など業種も広がりをみせている。
調査会社の矢野経済研究所によると、市場規模は年々拡大。平成29年度は443億円と、26年度の約2倍になると予測する。また26年度から32年度までは年平均で17.1%成長すると予測。「シェアリングサービスの認知度は向上し、さらに利用も増加していく」と今後も拡大を見込んでおり、工夫を凝らしたサービスがまだまだ登場しそうだ。