【編集者のおすすめ】ハーバード大では昭和天皇の「終戦の詔書」音読でリーダーシップ学んでいた 『ハーバード日本史教室』佐藤智恵著

2017.11.18 13:00

 世界最高の学び舎(や)、ハーバード大学の教員や学生は日本史から何を学んでいるのだろうか。授業をのぞいてみると『忠臣蔵』『源氏物語』などをテキストとして取り上げたり、ポーカーの名手として有名だった山本五十六、全米に「武士道」を伝えた新渡戸稲造、羽織・袴(はかま)でアメリカを闊歩(かっぽ)した岡倉天心について教えたり…。日本人も知らない日本の魅力があふれている。

 「モラルリーダー」という科目では、原爆投下を決めたトルーマンの決断プロセスについても議論。授業の最後には「終戦の詔書」を読み上げ、昭和天皇からモラルリーダーシップを学んでいるというのだから驚きだ。

 本書には、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア・セン氏、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者として知られるエズラ・ヴォーゲル氏、日本史を専門とするアンドルー・ゴードン氏、国際政治学者、ジョセフ・ナイ氏ほか、ハーバード大の教授10人が登場する。

 日本を研究対象に選んだ教授たちは、日本に関してそれぞれにパーソナルなエピソードがあり、日本について学びたいと強く思ったきっかけがあると知った。インタビューを通して、世界から見た日本の価値を再発見できる。

 「世界に日本という国があってよかった」というアマルティア・セン教授の一言には、日本人として思わず涙……。中国が急成長し、近年、日本のプレゼンスはめっきり下がって…なんて閉塞(へいそく)感を軽く吹き飛ばしてくれるはずだ。(中公新書ラクレ・820円+税)(中央公論新社特別編集部・中西恵子)

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