2018.2.19 07:32
平昌五輪も後半戦に入り、ますます熱い戦いが繰り広げられている。日本では25日に国内最大のマラソンレース、東京マラソンが開催。トップアスリートもアマチュアランナーも、運動中の持久力や集中力を維持するには、エネルギー補給が大切なポイントだ。近ごろは、意外な食べ物がスポーツシーンに活用されている。 (榊聡美)
◆ご飯のお供で補給
昨年11月に開催された神戸マラソン。30キロ地点直前の給食所に用意されたのは、何とご飯のお供である塩昆布だ。地元に本社を置く、食品メーカーのフジッコが、5年前から同大会に提供している。
「ボランティアスタッフとともに、社員がランナーの手のひらにのせて配ります。それをガバッと口に運んで塩分補給し、もうひと頑張りするスイッチを入れています」と、同社マーケティング部の寺嶋浩美部長は話す。
「30キロの壁」ともいわれる難所では、脚のつりやけいれん、低血糖で体が動かなくなる「ハンガーノック」などが起きやすい。
「発汗によるミネラル不足が原因のひとつです」
スポーツドクターである、稲毛病院(千葉市)の整形外科・健康支援科、佐藤務部長はこう説明する。
筋肉を動かすエネルギー源は糖質。その代謝を促すにはビタミンと、ナトリウムやカルシウムなどのミネラルが必要になる。
「昆布は牛乳の20倍以上もミネラルが含まれ、しかも体への吸収率が高い。スポーツ時の栄養補給に塩昆布を活用するのは理にかなっています」
以前から一部のアスリートは、レースやトレーニングに塩昆布を携行していた。同大会をきっかけに一般ランナーも取り入れるようになったほか、飲み物と一緒に塩昆布を常備する少年野球やサッカーのチームも増えているという。
◆片手で食べられる
伝統的な和菓子のようかんは、スポーツ向けがお目見えした。1食分がスティック状になった、井村屋(津市)の「スポーツようかん」。
そもそもようかんは、「糖質、ミネラルなどを含み、持ち運びしやすく溶けにくい。スポーツ時にぴったりです」(同社経営・海外事業戦略部)。
走りながらでも片手で食べられるようにパッケージを工夫する一方、糖質には、ゆっくりと消化吸収し、エネルギーの持続が長くなる効果が期待できる「パラチノース」などを使用し、機能性を高めた。
定番の「あずき」に加え、若年層や外国人ランナーにもファンを増やそうと、チョコレート味の「カカオ」を新発売した。
◆甘すぎないバナナ
アスリートが試合中に口にしているのを見かけるのがバナナ。ドール(東京都千代田区)の「低糖度バナナ」は、運動中に適した、さっぱりと甘すぎない味わいが特徴だ。
同社が、スポーツの分野で入賞経験のあるアスリートを対象に行った調査では、約4割が運動時に果物を食べており、中でもバナナは断然のトップ。一般的にバナナは高地で栽培された、糖度20度を超えるような濃厚で甘みの強いタイプが好まれる。しかし、運動時は「集中力が弱まる」「のどが渇く」などの理由で、強い甘みは敬遠される傾向があるという。
低糖度バナナは標高250メートル未満の低地で栽培され、水分が多く、糖分に変換されるでんぷん質が少ない。このため高地栽培と比べて13%ほど糖度が抑えられている。甘すぎない味は、サラダやスムージーなどにも使いやすいと好評とか。2年後の東京五輪に向け、食の世界の“スポーツシフト”は加速しそうだ。