閖上の宗教施設整備進む 被災の釣り鐘、東禅寺に 伊勢神宮から鳥居贈呈 宮城

2018.6.8 07:37

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県名取市閖上地区で、祈りをささげる場所が震災前の姿を少しずつ取り戻している。東禅寺では津波で流され、がれきの中から見つかった釣り鐘が7日、預かってもらっていた法光寺(埼玉県飯能市)から戻り、およそ7年ぶりに音を響かせた。閖上湊神社では先月、伊勢神宮(三重県)から贈呈された鳥居が建立された。

 東禅寺は震災によって本堂が全壊するなどの被害を受けた。昨年12月に震災前と同じ場所に再建されて今年3月、境内の整備が完了した。

 釣り鐘は昭和53年11月に完成。高さ約1・5メートル、直径約1メートル、重さは約1トン。震災前には同地区に住む多くの人々が「除夜の鐘」などでついてきた。しかし、震災の津波で流され、約3カ月後に50メートルほど離れた場所で発見された。

 処分される可能性もあったため、再建までという約束のもと、東禅寺住職の三宅俊乗さん(59)と法光寺の住職が大学の同級生という縁で預けられた。「被災した寺の鐘」として閖上地区の方角を向いてつくように設置され、参拝者は遠く離れた場所から鐘の音を被災地に届け続けてきたという。

 三宅さんは「感慨無量という言葉に尽きる。閖上の人々の希望の鐘として鳴らし続けたい」と話す。

 先月28日には津波で鳥居や社殿が流失するなどした閖上湊神社の再建予定地に伊勢神宮から贈られた鳥居が据え付けられた。20年周期で建物を一新する「式年遷宮」の中で、古くなった鳥居を譲り受けたという。再建予定地は広さ約1200平方メートル。

 同神社の宮司、伊藤英司さん(51)は「うれしい限り。復興のシンボル、地域の人々の心のよりどころとして再建を進めたい」と話した。(塔野岡剛)

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