働き方改革法成立 70年ぶりの大改革は過労死の歯止めとなるのか

2018.6.29 19:54

 昭和22年に制定された労働基準法の約70年ぶりの大改正となる働き方改革関連法は、これまで“青天井”だった時間外労働(残業)の上限を決め、違反に罰則を設けたことが特徴だ。繰り返される過労死の歯止めとなるか。

 「過労死(karoshi)」が初めて英語の辞書に掲載されたのは平成14(2002)年。日本の長時間労働は国内外から批判の的だった。毎月勤労統計調査によると、労働者(パートを除く)の平均年間総実労働時間は、20年のリーマンショックによる不況でいったんは下がったものの、ここ10年間、約2千時間で推移。1500時間以下の欧州などと比べ、高止まりの状態が続く。

 精神疾患による過労自殺者(未遂を含む)で労災認定されたのは28年度で84人、近年は90人前後で、減る気配はない。特に働き方改革を後押ししたのは、27年に過労自殺した大手広告会社、電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=の違法残業だった。月の残業は100時間を超え、1日2時間の睡眠を強いられ鬱病を発症した高橋さんのケースは、電通を罰する刑事事件に発展した。

 これまでは労使協定で何時間でも残業上限を決めてよかったが、働き方改革では、告示で示していた残業上限「月45時間、年360時間」を法律に格上げし、原則とした。繁忙期でも「月100時間未満、2~6カ月で月平均80時間以内」と定め、違反した場合、懲役6カ月以下または30万円以下の罰金が科せられる。

 ただ、これは労災認定の基準となる「過労死ライン」とほぼ同じだ。さらに診療を断れない応召義務のある医師や、人手不足の建設業や運送業は規制が5年間猶予されており、抜け穴になる懸念も指摘される。

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