2019.1.25 06:00
■財政再建中心主義が招く金融危機
昨年は地震や台風などにより日本中に大きな被害が出ました。国土強靭(きょうじん)化は待ったなしです。また、少子化や地方の衰退などは、その対策のための長期計画と予算措置が必要なことは誰の目にも明らかです。
しかし、こうしたことに抵抗し続けている組織があります。財務省です。彼らは財政再建ばかりに気を取られ、目の前に迫っている国家の本当の危機が見えないのです。
安倍晋三総理がこれまで進めてきた経済政策、アベノミクスによる「異次元の金融緩和」は本来、民間企業の投資を拡大させることが目的だったはずです。しかし、実際には民間銀行の融資はさほど伸びていません。政府が国家の長期ビジョンとそれを実現するための財政出動を行っていないため、民間企業には国の先行きが見えず、それが原因で投資をためらっているのです。
2008年のリーマン・ショック級の経済危機なら消費増税を延期すべきとの意見もありますが、増税の延期だけでこの危機は解決できません。デフレ危機からの脱出には、政府の財政出動による民間需要の創造が不可欠なのです。
しかし、財務省は財政再建しか頭にありませんから、「これ以上国債の発行残高が増えれば、いずれは返済不能になり財政破綻する」と20年間も同じことを言い続けています。
これは全くのでたらめです。破綻するのは国家でも日銀でもなく民間銀行なのです。そして、銀行が倒れれば企業も連鎖倒産してしまいます。これこそ本当の危機なのです。こうした隠れた金融危機が、足音静かに忍び寄っているのです。
事態を引き起こした原因は、財務省の財政再建中心主義にあります。国民経済を守るための財政であるにもかかわらず、財政を守るため本末転倒の過ちを犯しているのです。
本書は、財務省の根本的な過ちを指摘し、なぜ彼らがそうした過ちを犯したのか、その原因を明らかにし、財務省に正気を取り戻させるために書き下ろしたものです。それができて初めて、アベノミクスの金融、財政、民間投資という「3本の矢」が機能することができ、デフレの危機から脱出することができるのです。
読者の皆さんにご賛同いただけることを期待しています。(1300円+税 産経新聞出版)
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【プロフィル】西田昌司
にしだ・しょうじ 1958年、京都市生まれ。滋賀大学経済学部卒業。90年から京都府議会議員5期連続トップ当選。2007年、参議院議員初当選。13年、再選。税理士時代のスキルを国会の場での疑惑追及に生かし、「政治資金収支報告書を読むプロ」「国会の大砲」の異名を取る。主な著書に、佐伯啓思、西部邁両氏との共著『保守誕生 日本を陥没から救え』(ジョルダン)や、『総理への直言』(イースト新書)など。