【新時代のマネー戦略】「節約」か「投資」か お金を増やしたい時、貯まる人が選ぶのはどっち?

2021.1.22 06:00

 お金を増やすなら「節約」か「投資」か。

 出費を減らせば、貯蓄はダイレクトに増える。「節約」は、家計見直しの王道ステップです。しかし、「細かい節約はやるだけムダ」、「反動で衝動買いしたら意味がない」という意見もあります。

 一方「投資」も、「資産を増やす手段」として考える人もいれば、「投資はギャンブル」と否定したり、「お金持ちがするもの」と無関心だったりと、人によって考え方はさまざまです。

 では、お金を貯めている人は、「節約」や「投資」をどう捉えているのか。データを追っていくと、そこにはある傾向が見られました。

 コロナ禍が長引き、お金の不安もますます広がる今。貯まる人、貯まらない人の考え方をデータで分析し、家計の見直しをどうすべきか探ってみたいと思います。

貯まる人は「節約より投資」

貯まらない人は「貯蓄よりギャンブル」

 参照するデータは、2020年に実施した「お金と暮らしに関する調査(※1 概要は本記事末を参照)」。対象とした全国の20歳から64歳までの男女900人の中から、次の定義で「お金が貯まる人」「貯まらない人」を抽出。両者の違いを比較していきます。

貯まる人…最近1年間の貯蓄額が100万円以上」(145人)

貯まらない人…「最近1年間の貯蓄額が25万円未満、もしくは赤字」(283人)

 調査では、「お金を貯めたい、家計を変えたいと思ったとき、重視するのはどのようなことか」を質問。まずは貯まる人が、貯まらない人と比べ、高かった項目のTOP3を見ていきましょう。

 最も差がついたのは、「投資を取り入れる」。貯まらない人は9.2%だったのに対し、貯まる人では22.8%と実に倍以上。その差は、13.6ポイントです。

 貯まらない人との差が、次に大きいのは、「貯蓄額をチェックする」(12.0ポイントの差)、そして「確実に貯められる方法を探す」(10.5ポイントの差)と続きます。

 一方、貯まる人と比べ、貯まらない人が高かった項目は次の通りです。

 最も差が開いたのは「節約する」で、貯まらない人では48.8%。貯まる人の42.1%と比べ、6.7ポイント高くなっています。(なお、表中の数値は、「『貯まる人の値』-『貯まらない人の値』」で算出しているため、プラスに高ければ貯まる人で高い項目。マイナスに高ければ、貯まらない人で高い項目ということになります)。

 続いて「宝くじやギャンブルで一獲千金を狙う」(4.4ポイントの差)、「収入を上げる」(2.8ポイントの差)と続きます。

 ここで気をつけたいのは、「節約する」は、貯まる人も4割以上が支持しており、高い値であるということ。つまり、貯まる人は、節約を否定しているわけではありません。むしろ、「投資を取り入れる(22.8%)」よりも、絶対値で見れば高い値です。

 「ギャンブルで一獲千金」についても、貯まらない人が極端に高いわけではなく、そもそも値は1割未満です。「収入を上げる」についても、両者は僅差でした。

 ただ、データを全体的に見れば、貯まる人は貯まらない人に比べて、「節約もいいけど投資も重要」と考える傾向があるのは明らか。

 貯まらない人は貯まる人に比べると、「投資より節約」と考える傾向が強く、「確実に貯めるより、ギャンブルで一獲千金」を狙う傾向があるのも事実です。

貯まる人は目先の増減より、家計の「体質改善」に向けて動く

 それぞれのTOP3の結果を見ると、貯まる人と貯まらない人では、見直しの際に見るポイントが異なることに気づきます。

 貯まらない人で高い項目は「節約」や「収入アップ」。つまり、注目しているのは金額そのものです。これに対し、貯まる人が着目しているのは、投資で「お金を増やすこと」や、「確実に貯まる仕組みをつくること」。家計全体を見て、お金をどう動かしていくかを考えています。

 もちろん、節約や収入アップは、即効性があり、家計を見直す上で重要です。ただ、表面上の金額だけを追いかけてしまうと、無理なダイエットと同じで、結局続かなかったり、リバウンドしたりする結果に。短期的な効果は出せても、持続可能でなければ資産は増やせません。

 その点、貯まる人が重視しているのはお金の「動かし方」であり、いわば、家計の体質そのものを変えること。ここが、大きな差です。貯蓄は継続が大切。節約もしつつ、無理せず貯め続けられる家計を調整することが、将来的な貯蓄の差につながります。

貯まらない人は、「投資」を毛嫌い?

 しかしなぜ、貯まる人は「投資」を重視し、貯まらない人はしないのか。

 使えるお金を1000円増やしたいなら、投資で稼ぐより、節約で浮かせるほうが手っ取り早くて確実です。むしろ、貯まる人こそ、「投資より節約」を支持しそうです。

 残念ながら、貯まる人が「投資」に比重を置く理由については、今回は調査していないため、明らかになっていません。しかし、貯まらない人が投資を重視しない理由については、取材やこれまでの調査を通じて感じていることが1つあります。

 それは、貯まらない人は投資について、ネガティブな先入観を持ちがちだということ。「投資には大金が必要」「元本保証がないからこわい」と、最初から選択肢にあげていないことが多いのです。 これが、貯まらない人の「投資」に対するデータの低さに表れているのではないか、と感じました。

投資へのネガティブな思い込みが、逆にリスクを招く

 今は、投資に大金を用意する必要はありません。ネット証券など一部の金融機関では、積み立てで投資信託などを買う形であれば、100円から設定できます。さらに、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAのように、非課税で運用できるお得な制度もあります。

 リスクについても、「100かゼロ」のようなハイリスクなものばかりではありません。例えば、前述した積み立てでコツコツ投資信託を購入していく投資のスタイルは、初心者でも長く続けさえすれば、リスクを減らしながら十分に資産成長を見込める手法です。

 ですが、投資を頭から否定してしまうと、こうした情報は入ってきません。情報がないということは、選択肢が広がらないということです。

 実際、データではこのような結果も出ていました。

「節約」より「投資」より、大事なこととは

 投資をすれば必ずお金が増える、というわけではありません。しかし、目を向けることでお金の知識が増え、家計の選択肢が増えるのは確かです。制度や手段について調べ、自分が取れるリスクや、投資にまわしてもよい範囲などを考えれば、自然と家計全体の見直しにもつながります。

 たとえ、最終的に投資を行わなくても、身についた「お金のリテラシー」は、決してムダになりません。なぜなら、知識が増えれば、自分の古い情報や思い込みを訂正していけるからです。

 怪しい儲け話や詐欺などから、身を守る武器になるのはもちろん、総合的にみて、損をしないですむお金の使い方を選択していけます。

「正しい」と思っているものこそ、情報のアップデートを

「銀行がすすめている金融商品なら安心だ」

「病気になったら困るから、老後こそ医療保険が必要」

「投資はリスクがあるし、儲けても税金を取られるから、預金がいいに決まっている」

 こうした「思い込み」は、意外と多くありますが、少し知識がつけば、裏側にあるリスクにも気づけるはずです。

 今回、貯まる人は、貯まらない人と比べて、家計を見直す際は「投資」を重視する傾向が見られました。ただ、このデータが示すのは、「投資をすること」ではなく、「視野を広げること」ではないか。それがお金を貯める力につながっているのではないか、と感じます。

 年齢を重ねるほど、「思い込み」は強くなり、なかなかアップデートできなくなります。資産を守るためにも、新しい知識を取り入れる手間を惜しまないようにしたいものです。

※1 2020年7月実施。対象者は全国20歳~64歳の男女900人。インターネットリサーチ。調査企画・データ提供:株式会社カクワーズ

※2 調査時の「貯蓄額」の定義:最近1年間に収入から貯蓄した世帯ごとの貯蓄額。預貯金のほか、積立投資、貯蓄型保険などへの積立額など含む(株などの資産は含まない)。同居でも親や兄弟の貯蓄額は含まないものとする

36874

カクワーズ(カクワーズ)

images/profile/kakuwords.png

株式会社カクワーズライティング&リサーチ

お金が貯まる人への膨大な取材と調査データから「貯まる暮らし」を研究。ファイナンシャルプランナー(AFP認定)資格をもつライターが、定性&定量の両面から「貯まる人」の生活に共通する習慣や考え方を分析し、女性誌やWEBを中心に発信。代表書籍に「お金が勝手に貯まりだす暮らし」(リベラル社)などがある。

【新時代のマネー戦略】は、FPなどのお金プロが、変化の激しい時代の家計防衛術や資産形成を提案する連載コラムです。毎月第2・第4金曜日に掲載します。アーカイブはこちら

閉じる