【クルマ三昧】鍛え上げられたスバルBRZ 期待に応える絶対的な速さと安全性能

2021.4.9 06:00

 右足の動きに忠実に反応

 トヨタ86とスバルBRZの兄弟車が、揃ってモデルチェンジされた。今秋の発売を予定している。プロトタイプとはいうものの、ほぼ完成車を撮影することに成功した。

 BRZはすでにアメリカでのお披露目を終えており、86の完成を待っての同時発表。試乗記は今後に譲ることにして、都内某撮影スタジオに潜入。入手した資料からの情報を報告する。

 内外観を観察する限り、キープコンセプトであることは明らかだ。全長4265mm、全幅1775mm、全高1310mm。現行型とのサイズ拡大はわずかであり、ホイールベースやトレッドの数値にもほとんど変化はない。低重心であり、ショートホイールベース&ワイドトレッドのスクエアディメンションも踏襲されているのだ。

 そこから想像するに、コーナリング性能の熟成に手が加えられている。クイックでシャープなハンドリングを披露するであろうことが想像できる。ルーフやフロントフェンダーは軽量なアルミ材であり、マフラーなどの軽量化も進んでいるという。ボディのねじり剛性は50%も引き上げられているという。タイヤサイズも215/40R18インチまで拡大されており、高い走りの性能が期待できる。

 だが、フルモデルチェンジ最大のトピックは、シャシー性能の熟成ではない。エンジン排気量が2リッターから2.4リッターに拡大されたことに期待が集まるのだ。スバル伝家の宝刀、水平対向4気筒直噴エンジンを搭載。ストロークをそのままにボアを拡大することで、排気量を大幅に高めたのだ。最高出力は235ps、最大トルクは250Nmに達した。

 これまで、旋回性能は優れていても、動力性能には物足りないという意見も少なくなかった。限られたパワーを精一杯叩きつけて走らせるのが86&BRZの楽しさでもあり、絶対的な速さを求めるユーザーの期待に応えた形だ。0-100m加速は7.4秒から6.3秒まで鍛え上げられているという。

 動力性能の不足分をターボ化に求めるユーザーも少なくはなかったが、右足の動きに忠実に反応する鋭さも86&BRZの魅力であることから、今回はターボチャージャーに助けを借りることなくNAのままでの排気量アップである。

 排気量アップによる重量増の変化も少ない。ボアを拡大することでの排気量アップを選択したことで、エンジンユニットそのものの肥大化はほとんどされずに済んだ。車両総重量は1270kgに抑えられている。おそらく前後重量配分も整っているであろう。パワーアップの代償はないのではないかと思われる。

 運転支援技術「アイサイト」採用

 運転支援技術「アイサイト」が組み込まれたのもトピックだろう。スポーツカーである86&BRZとて、高度な安全性能も必要である。スバルが得意とするアイサイトを採用することで、安全性能が飛躍的に高まるばかりか、安楽なロングクルーズも可能になったであろう。

 アイサイトが組み合わされるのはAT仕様だけとはいえ、ハンドルを握り、こまめにマニュアルシフトレバーを動かしながらマシンと格闘するのがスポーツドライビングの真髄であり、そのための86&BRZではあるものの、そんな86&BRZには、一方で安全運転支援アイサイトと組み合わされるのだから興味深い。

 ちなみに、名称が変更になった。スバルBRZはそのままだが、トヨタ86はGR86と命名されている。スープラとヤリスに続いて3台目のGRブランドとなる。

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木下隆之(きのした・たかゆき)

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レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター

東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。

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