≪僅差の結論 家族の社会的実態を重視≫
戸籍上の性別を変更した性同一性障害の男性と、第三者の精子でもうけた長男を「父子」と認めた12月10日付の最高裁第3小法廷決定は、裁判官5人中、大谷剛彦(おおたに・たけひこ)裁判長ら2人が反対意見を述べるなど、僅差での結論となった。多数意見は医療の進歩などで家族の在り方が多様化する中、血縁関係がないことが明白でも、家族としての社会的実態を重視した形だった。
民法の嫡出推定規定は子の身分関係を早期に安定させるために設けられたとされ、強力な効果を持つ。ひとたび「夫の子(嫡出子)」と認められれば、これを取り消す「嫡出否認」の訴えを起こすことができるのは夫のみ。期間も「夫が子の出生を知ったときから1年以内」に限られる。
小法廷の議論を分けたのは、性別変更を認めた性同一性障害特例法の「効果」が及ぶ範囲の捉え方だ。