【冷静と情熱のあいだ】
3回目のオリンピック出場をかけた戦いが自分にとってこれほど重いものになるとは思わなかった。代表に選ばれた瞬間は複雑だった。うれしい気持ちの一方で、全日本5位と文句なしで選ばれたわけではない。他の若い選手のチャンスを奪った面もあるから、「なぜ髙橋を行かせたんだ」と後々まで言われないようにしなければと、重責を感じている。
無謀だった4回転
全日本の演技後は自分の情けなさから涙が出た。直前のケガの影響もあって、これほどジャンプ練習をせずに試合に臨んだことはなかった。痛みで陸の上での速いステップの練習さえあまりできず、もうこんな状態では戦えない…と何度も弱気になる自分を奮い立たせていた。幸い本番では痛みは軽減していたけれど、ヒザが伸びにくく、かばって動いていた体のクセで左右のバランスが崩れ、左のパワーに右足が耐え切れずに転倒が多くなった。