【佐藤優の地球を斬る】
NHKの籾井勝人(もみい・かつと)新会長が1月25日に行った就任記者会見の内容が問題になっている。筆者は、籾井氏が会見の場で、慰安婦問題について述べること自体に問題はないと思う。しかし、問題はその内容だ。第二次世界大戦中のオランダ領インドシナ(現インドネシア)におけるオランダ人戦争捕虜とオランダ人慰安婦の問題は、過去のわが国の外交努力によって、一応、沈静化しているとはいえ、日本政府の要人の発言によっては、再燃しかねない「爆弾」である。慰安婦問題と全く関係のない文脈で「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」という籾井氏の発言は、オランダだけでなく、欧米全体における日本の評判を落とした。
国際放送の議論後退
筆者が残念に思うのは、こういう無定見な不規則発言のせいで、NHKの国際放送についての議論が遠景に退いてしまったことだ。