STAP細胞の研究は小保方氏が留学していた米ハーバード大学医学部での研鑽(けんさん)が基礎になっていると本人も語っている。筆者は2001年にハーバード大学で表現の自由とジャーナリズム分野の研究員をしていた。その際、別キャンパスの医学部での勉強会にも参加した。びっくりしたのは、この分野の研究費が極めた潤沢で、ミーティングもワイン付きで豪勢だったことだ。大学の近くのチャールズ川のほとりには万能細胞の研究を支援をする民間の研究所がそびえていた。
その成果は「金のなる木」に育つと期待され、万能細胞の開発成功者には名誉と同時に、富も付いてくる。多くの研究者や私企業が「金のなる木」にむらがり、人類社会への貢献という科学の本来の使命は忘れられがちだった。
大騒ぎしたものの
一方で、メディアにとっても、議論が「活劇化」すればするほど、オーディエンス(読者・視聴者)が喜び、結果として業績(視聴率と販売部数)が伸びる。実際、1月30日に「ネイチャー」に論文が発表された直後は、「理系女子」の快挙を大きく取り上げ、論文に疑惑が浮上すると、さらに大きく報じるようになった。