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【溝への落とし物】気遣いすぎる日々 本谷有希子 (1/3ページ)

2014.4.27 17:35

ほんだしを買い忘れないために撮った、ある日の、ほんだしの写真=2014年1月15日(本谷有希子さん撮影)

ほんだしを買い忘れないために撮った、ある日の、ほんだしの写真=2014年1月15日(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、演出家、小説家の本谷(もとや)有希子さん(事務所提供)

 体が冷えてしまうからと、友人が氷抜きでジンジャーエールを注文したのに、うまく伝わらなかったらしく、グラスの縁いっぱいまで氷が詰まったジンジャーエールが運ばれて来る。本人は少し困った顔をしたあと、まあいいか、と口を付け出したが、私は彼女の腸が冷えすぎるのではないかと、心配でたまらない。そこで、途中で空のグラスをこっそりもらいに立った私は、しゃべっている彼女の手前にそのグラスと小さなスプーンを並べて、そっと置くことにした。そうすれば彼女が、いつ氷をジンジャーエールの外に思いきりかき出したくなったとしても、平気だと思ったのだ。

 だが、彼女はそんな状態には一度もならなかったし、テーブルに置かれた空のグラスの意味について真剣に考える人も、誰もいなかった。

 届かない思い

 最近、会話の中にやけに「仲間」という言葉を使っている人に出会った。釣り仲間。旅行仲間。オークション仲間。だが、私には彼がどの程度の間柄の知り合いを、「仲間」と呼んでいるのかが、いまいちよく分からない。いつか彼がその仲間たちから手痛い仕打ちを食らうのではないかと心配で、さりげなく「仲間」の定義を一度よく考えてもらおうとするが、伝わらない。こうなったらと、私は彼が自分のことを軽々しく「仲間」と言った瞬間に、いつでも激怒できるように待ち構えているのだが、なぜか彼は私のことを仲間とは一切呼ぼうとしない。

あまりにひどい演出で、布団に入っても眠れない

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