【KEY BOOK】「日本文化私観」(坂口安吾著/講談社文芸文庫、134円)
この本には表題のエッセイとともに、超有名な『堕落論』、菱山修三を論じた『かげろう談義』、織田作之助の死を惜しんだ『大阪の反逆』なども入っている。小林秀雄がいかにインチキなのか、花田清輝がいかに批評力をもっているのかというエッセイも収録されている。
これらの多くは毒舌エッセイで、読む者の溜飲を下げさせるとともに、安吾が何にこだわろうとしたのかが、よくわかる。安吾は日本の「本当」と日本の「本場」に浸りたかったのだ。
その舌鋒が日本文化のメッキ剥がしに及んだのが『日本文化私観』である。そうとう乱暴な判定が連打されるのだが、昭和日本のやりきれない暗澹(あんたん)とアナーキーな快楽を想定しながら読むと、身に凍みるものがある。