メキシコ全土に点在する古代都市群は、言わずと知れたメキシコの魅力の一つ。年に2回春分と秋分の日に、大蛇ククルカンの胴体が影によってピラミッドに出現することで有名なマヤ文明の「チチェン・イッツァ」や、800年もの間誰にも知られることなく、鬱蒼(うっそう)とした熱帯雨林の中に眠っていた「パレンケ遺跡」など。16世紀にスペイン軍がメキシコに上陸する前の、時代をまたいだ数々の古代遺跡が残っている。
メキシコ滞在中は、いくつかの遺跡を訪れた。そのうちの一つ、首都のメキシコ市からバスで1時間、約50キロ離れた場所に、ラテンアメリカ最大の都市遺跡「テオティワカン」がある。数十メートルはある幅広のメーンストリート「死者の道」に沿って、高さ65メートルの太陽のピラミッドや、高さ42メートルの月のピラミッドが建つ。上に登っては、周辺の山々を眺めたり、周囲の乾いた音に耳を澄ませ、当時の都市の様子や暮らし、現代とはまったく異なるであろう人々の世界観に想像を巡らせた。