絶妙な距離感は、いわゆる“猫かわいがり”ではない文体にもあらわれる。「猫の形態ではなく、命のあり方そのものへの興味だからでしょうか」
介護の対象は人、猫にとどまらず、金魚まで。なぜ、助けるのか。「食べようとしている、もしくはこの世界の何かに興味を持って見ている。このどちらかが残っている場合、生きようとしている力の手助けをしています」。潔い。
両親を見送った一軒家で、今も暮らす。それは猫のためだ。「何一ついらないけれど、ここにいる必要はある」。人も、猫も。限りなく対等な命の記録だ。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■はるの・よいこ 1957年、東京都生まれ。漫画家、エッセイスト。長年の介護の末に2012年に両親を相次いで亡くす。現在は家猫3匹と外猫たちと暮らす。本作は雑誌『猫びより』に「ハルノ宵子のシロミ介護日誌」として連載していたものをまとめた。著書に『開店休業』(プレジデント社、吉本隆明共著)など。
「それでも猫は出かけていく」(ハルノ宵子著/幻冬舎、1500円+税)