木漏れ日の中、トンネルのように木々が生い茂るマングローブの原生林をカヌーで進むと、周囲の音が吸収されるような経験したことのない静寂に包まれた。
奄美大島(鹿児島県奄美市)に広がるマングローブの原生林。西表(いりおもて)島(沖縄県)に次ぐ国内2番目の規模を誇り、広さは71ヘクタール。東京ドーム15個分に及ぶ。貴重な自然の宝庫は、1974(昭和49)年、奄美群島国定公園特別保護地区に指定されている。
マングローブは、海水と淡水が混在する汽水域に生える樹木の総称。奄美大島ではメヒルギやオヒルギなど約20種が確認されている。オヒルギは、根で濾過(ろか)した塩分を一部の葉に集め、黄色くなった葉を水面に落として排出する。マングローブで水が浄化されているため、水質も良く透明度も高い。
カヌーからは沖縄ではすでに絶滅したとされるリュウキュウアユが見られることも。不安定な泥地でもしっかりと生育できるよう、根を張り巡らせるのもマングローブの特徴だ。メヒルギは板のような形状の板根(ばんこん)を伸ばし、オヒルギは折り曲げた膝のような膝根(しっこん)を巡らせる。