ここしばらくブラジル関連のアーティストを紹介しているが、まだまだネタが尽きない。ブラジル音楽は、サンバに代表されるようにリズムに特徴がある。そのため、古くから世界中のダンスミュージックのトラックメーカーたちが素材に使ってきたし、実際にその中から名曲やヒットも多数生まれている。今回は少し視点を変えて、英国のDJ2人によるブラジル・プロジェクトを紹介しよう。
現地でセッション
まずは、ジャイルス・ピーターソン。アシッドジャズやトーキンラウドといったレーベルを牽引(けんいん)してきたプロデューサーでもあるDJだ。1980年代以降のレアグルーブと呼ばれるムーブメントを生み出した張本人だけに、クラブジャズやヒップホップはもちろん、ラテンやブラジル音楽にも造詣が深い。
そんなジャイルスによる最新のプロジェクトがソンゼイラの「ブラジル・バン・バン・バン」。これは彼がブラジルに乗り込み、現地のミュージシャンとセッションする企画。パット・メセニーとの共演でも知られるパーカッション奏者、ナナ・ヴァスコンセロスの土着的なリズムに始まり、サンバとファンクの融合を展開するエルザ・ソアレスやセウ・ジョルジ、エレクトロなども取り入れる鬼才ルーカス・サンタナといった人選にうならされる。実際出てくるサウンドも、実験的ながら踊れるという絶妙なバランス。このセンスは他人にはまねできないプロデュース力のたまものといえるだろう。