非日常求めず
特別企画展にちなんで今月(6月)14日に開かれたシンポジウム「1995年に見えてきたもの」には、早稲田大教授の佐々木敦氏(批評家)、多摩美大教授の椹木野衣(さわらぎ・のい)氏(美術批評家)、ライターの速水健朗(はやみず・けんろう)氏(編集者)、国立新美術館副館長の南雄介氏が出席。1995年の社会が現代美術に与えた影響を検証した。
東京都現代美術館の学芸員として99年に、現代作家の「MOTアニュアル1999ひそやかなラディカリズム」を開いた南氏は、全体的な創作の傾向として「視覚的なボリュームの欠如や生活に結びついた日常性、さらには、小ささ、細さ、軽さ、白っぽさ」を挙げた。
そうした傾向は、91年のバブルの崩壊や阪神大震災、地下鉄サリン事件の影響と無関係でない。およそ起こりえないと思っていた惨禍が実際に起きてしまったことで、椹木氏は「アートにも非日常的なものを求めなくなった」と分析する。