【国際情勢分析】
「彼はクリミアを取り戻した指導者として歴史の教科書に載りたかったのさ」。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)が3月、ウクライナ南部クリミア半島の併合に踏み切った理由について、信頼できる複数の識者たちは、実はこんなシンプルな見方で共通している。クリミアから始めた“火遊び”がマレーシア機撃墜の大惨事に至ることは、プーチン氏自身にも想定外だっただろう。
ウクライナで親欧米派が実権を握った2月の政変以降、ロシアはウクライナ東部と南部で親ロシア派住民の反乱をたきつけた。露特務機関が暗躍したのはもとより、「クーデターで発足したファシスト政権により、東部・南部の住民には危険が迫っている」といったプロパガンダ(政治宣伝)が大きな役割を果たした。
クリミアはロシア系住民が6割を占め、ロシアでも「ロシア固有の領土だ」と考えている人が多い。地理的にも「獲得しやすい断片」であり、ウクライナの親欧米派を“懲罰”するには都合のよい素材だった。