ステンドグラス。光の中で精彩を放つ。千葉県市川市に工房があるという。取材したい。暑い日。午前10時。わたしはJR本八幡駅で下車した。携帯電話で連絡する。
「分かりました。駅前広場で待っていてください。車で迎えに行きます」
10分後。車が駅前広場にやってきた。眼鏡。ひげをはやした穏やかそうな男性がハンドルを握っている。アトリエ「ミュージデ」代表、高井啓司さん(60)だ。
工房に到着。さっそく話をうかがった。高井さんは秋田県能代市(のしろし)出身。中学生のとき、キリスト教会で開かれる英語教室に通った。
「教会で初めてステンドグラスを見たんです。赤と黄の色ガラスをはめこんだ素朴なものでした。生活空間とは違う異空間で体験したものだから、深く印象に残りました」
絵が好きだった。武蔵野美術大学に進学した。卒業が迫ってくる。なにか、仕事を見つけなくては。そんな軽いノリで東京都内の工房に就職した。偶然、ステンドグラスを扱っていた。上司に命ぜられるまま、デザインし、制作。独特の技法を習得していった。