“鎌倉彫”をご存じだろうか?
その源流は仏具として生まれ、漆が渋みと深みのある独特の色合いを醸し出すこの伝統工芸品は、高校時代を鎌倉で過ごした私にとってなじみ深い存在であり、鎌倉散策を楽しんだことがある方なら一度は目にされたことがあるのではないだろうか。
今回ご紹介する博古堂(はっこどう)の品は、宋の時代の流れをひく歴史ある鎌倉彫イメージを残しつつ、心地よく現代へバージョンアップさせ、洗練された躍動感ある伝統の美しさを感じさせてくれる逸品である。
宿る古の精神
博古堂は、鎌倉の鶴岡八幡宮の鳥居の真横に品格ある店舗を構える。訪れる度、当代である後藤圭子氏はいつも笑顔と優しい語り口で迎え入れてくださるが、見せていただく品々からは、単に美しいという表現では収まらない、強い精神性が感じられる。仏師の技術を源流に持ちつつ長い年月をかけて磨き上げた技法の結実には、武士の精神が宿っているようだ。例えるならば“威風堂々”という言葉が適切であろう。