商店街で買い物をしていると、たまにおしっこを漏らしてしまったのではないかとびっくりすることがある。いや、正確には「おしっこを漏らした時のような感覚」に襲われ、思わず下半身が濡れていないか確認してしまうという意味だが、大事なのは、私にとってそれがちっともいやぁな感じではなく、むしろ何かから解放されたような幸せな気分だということだ。
商店街はいい。やはり、あの笑顔で交わされる挨拶が関係しているのだろうか。人と人との触れ合いか。もしかして、心にあったかいものがじんわり広がっていくその感じが、放尿した時とどことなく似ているから、私の脳みそがいちいち混乱するのかもしれない。私は頭でおしっこを漏らしているのだ。そういえば放尿と商店街に共通しているのは、何とも言えない多幸感ではないか。
手間暇かける快感
いつも通っていたスーパーがあっけなく潰れてしまい、2カ月ほど前、私は近くの商店街で買い物をするようになった。初めの頃、私はてっきり手間のかかる分だけスーパーよりも安くあがるだろうと思っていたのだが、実は、大量に仕入れられない分、スーパーよりも割高なものも多い。お会計もそれぞれの店で別々にしなければならない。つまり、面倒な上、高いのである。しかし今の私は夕方になると、机からいそいそと立ち上がり、財布を握りしめて家を出る。