国連総会で演説する安倍晋三首相の口から、「オサマさん」の名前が出てこようとは思いもしなかった。パレスチナ自治政府の職員であるオサマさんとは3年前、前任地の大阪で会った。太陽光発電システムについて、大学で研修する様子を取材したのだ。
パレスチナとクリーンエネルギーという「ミスマッチ」に興味を持ったのだが、意外なことを聞いた。
「私たちにとって太陽光は、サバイバルのエネルギーなのです」
オサマさんが勤務するガザ地区の電力は、燃料不足で十分に稼働できない火力発電所と、イスラエルからの送電に依存している。頻発する停電に備える自家発電機も、地下トンネル経由で入ってくる密輸燃料が頼りだ。
しかし、太陽光発電なら外部に頼らないエネルギーが得られる。資源は豊富だ。きまじめそうなオサマさんは、「まずは中核病院に導入したいと思っています」と話していた。
今夏、東京の外信部デスクに異動した私を待っていたかのように、ガザでの軍事衝突が勃発した。イスラム原理主義組織ハマスとイスラエルが戦火を交え、死者は2000人を超えた。