【BOOKWARE】
「いままで探し求めてきた何ものかを、ついに見つけた」とピーター・マシーセンは書いている。それがアフリカであった。しかしさすがのフィールドナチュラリストも、そのアフリカのいったいどこがアフリカなのか、すぐには突き止められない。アフリカはアフリカ中がアフリカなのだ。
東アフリカは人類発祥の地である。ルーシーもミトコンドリア・イブもここに誕生した。サハラ以南のアフリカは近代にいたるまでヨーロッパに知られていない暗黒大陸だった。そこから悪辣なアフリカ分割がおこり、アフリカは列強の餌食になった。しかし、アフリカには人類が住み着くずっと前から、風と植物と無数に動きまわるものたちとが棲息してきた。マシーセンはその原生のアフリカに辿り着いたのだった。そこには「ひとが生まれる木」(バオバブ)が誇り高く枝を伸ばし、葉を繁らせていた。