2014年のワールドミュージックを振り返ってみると、アフリカや中南米以上に面白かったのが、わが国ニッポンだ。日本各地に伝わる民謡を今の感覚で聴かせるという手法自体は今さら珍しくもないが、企画ものではなく、自然に表現できるアーティストが続々と登場しているが特徴となっている。その代表が木津茂里(きつ・しげり)だ。幼い頃から鍛え上げた生粋の民謡歌手だが、細野晴臣や青柳拓次らを迎えたアルバム「SHIGERI-BUSHI」のバランス感覚は見事だった。日本民謡の新たな道しるべとして、記憶しておきたい一枚だ。
また、くるりの新作に代表されるように、ロックやポップスのアーティストの中からも、民謡にアプローチすることが激増している。松田美緒、笹久保伸、アラゲホンジ、マイア・バルーなど挙げるときりがないが、リクルマイによるレゲエとのミクスチャー「きたぐにのはる」を聴くと、ダンスミュージックのカテゴリに「音頭」という項目が加わる日も近いのではと感じている。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)