破棄された産業用地や閉鎖された病院、使われていない軍事施設、下水道、地下鉄、建設現場、高層ビルの屋上など、彼らが無断侵入する場所はじつに多岐にわたる。基本的に、彼らが持っているのは、政治的な主張ではなく好奇心だ。誰も見たことのないものを、見てみたい。過去何世紀にわたり続けられてきた冒険者たちの旅と、「プレイス・ハッカー」たちの初期衝動に大きな差はない。かつての探検家は未知なる大陸に想いを馳せ、現代の都市探検家たちは警備員の脇をこっそりすり抜けて、秘密の場所の写真を撮ることで、自分たちが知らずに失っていたものを取り戻しているという実感を得る。
この本には、大きく2つの柱がある。ひとつは著者のギャレットが都市探検家として、8カ国で300回以上繰り返した無断侵入の物語。そして、もう一方では、アメリカで生まれ人類学や考古学を学んできた博士としてのギャレットが、民族誌学者的に「プレイス・ハッキング」の意味を考える。
イギリスで最も悪名高きプレイス・ハッカー集団、ロンドン・コンソリデーション・クルー(L.C.C)の一員だったギャレットの「都市探検」は、僕たちの想像を上まわるものだ。