昨年9月に10周年を迎えた雑誌『ビッグイシュー日本』。ホームレス(路上生活者)が販売し、1冊350円の売り上げのうち180円が彼らの収入となり、彼らの社会復帰を応援する仕組みだ。ビッグイシューを通して見えてくる「日本の貧困」の現状について、実際に販売している菅野春雄さんと、広報担当の佐野未来さんに話を聞いた。
「いつもしわ寄せ」
路上生活者に話を聞くと、「いつのまにかこうなっていた」と漏らす人は少なくない。なりたくてなる人はいない。菅野さんもそんな一人だ。
フレームの割れた黒縁のメガネが言葉を発するたびにずれる。それを照れくさそうに直す。話を聞くために会ってすぐに恥ずかしそうに「当人です」と頭を下げた。人の良さが染み出ている。
中学卒業後、集団就職で愛知県へ。トヨタの下請け工場で働いていたが、1970年、無断で仕事を休み、万博を見に行ってクビに。その後、18歳からほぼ日雇い労働者として「土木業界で生きてきた」と胸を張る。背が高く立派な体格は、ガテン系の現場で重宝されたはずだ。