軽やかなハングドラム
一方、オーストリア生まれの打楽器奏者マヌ・デラーゴが演奏するのは、21世紀に入ってからスイスで開発された新しい楽器ハングドラムだ。空飛ぶ円盤のような形をした金属製の打楽器で、たたいたりこすったりして演奏する。スチールパンにも似た軽やかな金属音が特徴で、オルゴールを聴いているような優しい気分になる音色だ。製作に非常に時間がかかるため、入手するのに数年かかるといわれている人気の楽器でもある。マヌはビョークに認められてツアーメンバーに参加するほどの実力者であり、プロデューサーとしての能力も高いミュージシャン。初のアルバム「シルバー・コバルト」では、ハングドラムの響きを生かしながらも、ボーカルをフィーチャーした曲をはじめ、アコースティックからエレクトリックまでさまざまなタイプのサウンドを聞かせてくれる。時には実験音楽のような先鋭的なアプローチも行うが、ソフトに響くハングドラムが絶妙に中和していて、ふわふわと空を飛んでいるような感覚が心地いい。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)