【KEY BOOK】「母のない子と子のない母と」(壺井栄著/偕成社文庫、756円)
『二十四の瞳』の壺井栄の名作中の名作。やはり小豆島が舞台で、戦争で夫と一人息子を亡くしたおとらおばさんと、病気で母を亡くした一郎・四郎の兄弟が傷ついた心をもちながらも互いに助けあい、励ましあっていく話だ。ぼくはこの頃すでに「傷」をもった心のほうに惹かれるようになっていた。ほかに『柿の木のある家』『坂道』『月夜の傘』『港の少女』など壺井作品はどれも絶品。身寄りのない主人公が多い。夫は詩人の壺井繁治。
【KEY BOOK】「小公子」(フランシス・バーネット著、若松賤子訳/岩波少年文庫、864円)
母と二人暮らしの美少年セドリック・エロルが、実は伯爵家の落とし子だったかもしれないという数奇な運命をめぐって、母との間を何度か裂かれそうになる日々が揺れ動く。明治23年に若松賤子が訳出した。バーネットにはセーラ・クルーの意外なセレンディピティを描いた『小公女』、植民地下のインドの屋敷の庭園に魔法を見いだすメアリーとコリンの物語『秘密の花園』もあって、少年少女の必読の名作になっている。